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トランプ勝利で終わった米中会談、90日後の大波乱を予感させる米国市場の異変とは?=近藤駿介

なぜFRBは「中立金利をやや下回る」という見方に転じたのか

米中首脳会談が現実的な妥協を見せたことは市場で好意的に受け入れられている。

11月のFOMCで「予想以上に景気を減速させかねない要因」に挙げられた貿易戦争が一旦休戦という格好になったことは、FRBの利上げの障害を軽減させ再びタカ派に引き戻す可能性も秘めているともいえるが、こうした見方が市場に広がることはなさそうだ。

FRBの動向で気に掛かることは、10月中旬まで「中立金利から距離がある」と発言していたFRBが、11月中旬以降、なぜ「中立金利をやや下回る」という見方に転じたのかというところ。

平均時給は前年同月比3.1%上昇と9年半ぶりとなる高い伸び率を示した10月の雇用統計発表直後に開催された11月のFOMC議事録には、「多くの参加者が、今後のいずれかの会合で、経済および政策の見通しの判断に際し、入手されるデータの評価を一段と重視する文言へ変更し始めるのが適切かもしれないと示唆」と記されている。

FOMC議事録の額面通り受け取るのであれば、平均時給が9年半ぶりとなる高い伸び率を示したあとに「ハト派」に転じるというのは整合性に欠けることだ。

FRBは「物価」と「雇用」という2つの責務を負っている(デュアル・マンデート;Dual mandate)。それゆえに「雇用統計」という統計は重要視されている。

しかし、雇用統計というのは本来経済の「遅行指数」である。つまり、FRBが、政策金利が中立金利に近付いて来たという認識を強めていることで「経済及び政策の見通しの判断」をより重要視するとしたら、経済の「遅行指数」を必要以上に重視するわけには行かなくなる。雇用統計は重要な経済統計であることに変わりはないが、FRB内部での取り扱い方には変化が起きて来る可能性があると考えた方が賢明そうだ。

FRBをハト派に変えたのは「7-9月期のGDP統計」か

FRBが突然「ハト派」に転じた原因は、7-9月期のGDP統計にあったかもしれない(勿論株価の乱高下やトランプ大統領から繰り返される批判も考慮している可能性はあるが、それらが金融政策に影響を及ぼしていることをFRBが認めることはない)。GDP統計自体は「遅行指数」ではあるが、在庫動向は将来の経済活動に大きな影響を及ぼす「先行指標」的性質を持っている。

米国7-9月期のGDPは、速報値、改定値共に前期比3.5%の力強いものになったが、在庫のGDPに対する寄与度は、速報値の2.07%から改定値では2.27%に上方修正されており、GDPが将来の需要を先食いする形で嵩上げされている可能性を示唆している。特に、改定値で個人消費が速報値から0.4%下方修正されているなかでの在庫投資の拡大は、10-12月期以降のリスクだといえる。

FOMCが「予想以上に景気を減速させかねない要因」として警戒感を表したように、貿易戦争は景気抑圧要因である。しかし、一方ではそれに伴う不透明感が在庫投資を増やし、足元の景気を一時的に嵩上げする要因になっていることにも留意が必要である。

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