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ソフトバンクの上場は市場にゆるされるのか?成功したといえるIPOの定義とは=炎

12月19日、東証一部にソフトバンクが上場しました。さまざまな悪条件も重なり、マーケットから批判の声もあがったこの上場劇はどうしたら成功となるでしょうか。(『億の近道』炎のファンドマネージャー)

プロフィール:炎のファンドマネージャー(炎)
小学生から証券会社に出入りし、株式投資に目覚める。大学入学資金を株式の利益で確保し、大学も証券論のゼミに入る。証券会社に入社後は一貫した調査畑で、アナリストとして活動。独立系の投資運用会社でのファンドマネージャーの経験も合わせ持つ。2002年同志社大学・証券アナリスト講座講師を務めたほか、株式漫画の監修や、ドラマ『風のガーデン』(脚本:倉本聰)の株式取引場面の監修を行う。

成功するIPOの定義について考える

いわゆるIPOとはいえなかったソフトバンクの上場

12月19日にソフトバンク<9434>のIPO(筆者としては厳密な意味でのIPOだとは思えないのですが、一応市場ではそうしたことになっています)があり、皆さんもご存知の通りの結果となった訳です。

IPOは申請から承認を経て公開価格や上場日の決定、投資家(主に機関投資家)に対する需要調査などの過程があって上場に至るというお決まりのコースがあります。

ソフトバンクのような大量の株式(17.6億株/発行済み株式数は47.8億株)を売り出すには関係者の想定以上の努力が必要で、商売とは言え幹事証券担当者、営業スタッフもご苦労されたと推察されます。

テレビCMでもソフトバンク株の公開が流れるなどかつてのNTTの時のような側面支援もありました。おいしい話には気をつけろとは良く言いますが、今回は異例の配当利回り(5%)を掲げて投資家を誘いました。申し込みをした投資家は蜜に群がったアリのような存在だったのかも知れません。

通常の公開価格は下限と上限が提示されますが、今回は1本値。1,500円で投資家に強制的に買わせることになりました。これも異例の措置です。

NTTの時とは違って、大型民間企業の株式を一度に発行済み株式の40%も放出するというのも違和感があります。市場環境も劣悪で需給悪の中なので本来は見送るべきだったという意見も後の祭りながら聞こえてきます。

しかも同社をめぐるIPO前の出来事は異常なものでした。通信障害にファーウェイ問題が重なり、IPO自体ができるのかどうか悩ましい状況があったと推察されます。

通常のIPOは小規模な会社が成長のために資金を確保するもの

通常のIPOでは比較的事業規模の小さな企業が成長のための資金を確保し、社会的な信頼性を高め人材確保など通じて次の成長を図っていくところに意義があると筆者は考えますが、ベンチャー企業とは言えない出来上がった会社の上場がIPOと同類で扱われるのは無理があります

いわば配当金を拠り所にしたものなのでREITや投信のような評価になりますが、配当金をベースにした評価は業績次第で減配のリスクを抱えてしまうことになります。

投資家の多くは公開株価でIPO銘柄を入手しようとトライしますが、放出株が少ないと申し込んでも当たらない。どうしても欲しいなら初値で買うことになりますが、それで初値が高くなるというのが通常のIPOです。

今回のソフトバンクは会社と幹事証券がぐるになって、勝手に都合よく価格を決めて多くの投資家に押し売りをしたようなものなのかも知れません。でも投資家もリスクを承知で投資したのだから文句は言えない。これがIPOの当たり前のルールです。

IPO成功の定義について筆者は公開株式数が市場環境に応じた適正なものであって価格もリーズナブルな水準で決められ、初値もそれより上で形成され、その後も適度な株価上昇が見られ、少なくとも数か月間は安定した推移を辿った場合を成功と捉える

少なくともIPOから、半年から1年間に株価の変動はあるとしても投資家に多大な迷惑をかけないできちんと予想した業績を上げ、成長のシナリオを実践していくことができれば自ずと株価はついてくる

Next: ソフトバンクの上場は、投資家に何をもたらしたのか

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