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米国からの逆風に沈む日本、2019年「アベノミクスの後遺症」との戦いのゴングが鳴る=近藤駿介

米国からの追い風が「逆風」に変わる

株式市場が低迷するなかで専門家の多くは「ファンダメンタルズは悪くない」「PER(株価収益率)面から株価は割安」という強気のコメントを出し続けている。

重要なことは、これまで日本経済のファンダメンタルズが好調だったのは、堅調な米国経済と株式市場から追い風が吹きこんでいたからである。

しかし、早ければ2019年の1月下旬にも米国からの追い風は逆風に変わる可能性がある。

日米貿易摩擦が火を吹く

米通商代表部(USTR)は12月21日に日米貿易交渉に向けて、通貨安誘導を封じる為替条項をはじめ、農産品や自動車における関税非関税障壁の削減など22項目の交渉目的を発表した。

この非関税障壁や為替条項を含めた米側の交渉目的発表が明らかにしたたことは、日本政府が2018年9月末の日米首脳会談で合意した「日米物品貿易協定(TAG)」について、「モノの貿易」に絞ったものであり「サービス貿易」「為替」などを含む「自由貿易協定(FTA)」とは全く異なるとしてきた説明が詭弁だったことだ。

政府が繰り返してきた「TAGとFTAは全く異なる」という説明は、所詮「ハマチとブリは全く異なる」という低次元の詭弁に過ぎなかったということである。

トランプ政権はこれまで韓国、メキシコ、カナダと貿易協定の見直しを行ってきたが、すべての国に「為替条項」を呑ませている。こうした事実と照らし合わせるまでもなく、日米貿易交渉で「為替条項」を強く要求してくることは間違いない。

日本が絶対に避けるべきこと

為替介入を行っていない日本との交渉で「為替条項」の標的になるのが、円安・株高を支えて来た「異次元の金融緩和」である。

円安・株高以外に成果がない「異次元の金融緩和」が日米貿易交渉の標的になるのは日本経済にとって痛手である。「異次元の金融緩和」は実際には日本経済にほとんど貢献していないが、「異次元の金融緩和」に対するトランプ政権からの圧力は日本にとって「応えるのも地獄、拒否するも地獄」といえるものである。

日本として絶対に避けなければならないことは、中央銀行である日銀が米国トランプ政権からの圧力によって金融政策を変更したと見做されることである。現在疑義を持たれている政府からの独立性どころか、他国、米国からの独立性も疑われてしまいかねない事態は、日本経済の将来に大きな禍根を残すことになるからである。

2%の物価安定目標の達成時期を事実上無期限延期するなかでも黒田日銀総裁は「異次元の金融緩和」を粘り強く続ける意思を示し続けて来ており、政策変更をする際には説得力のある説明が求められることになる。

仮に政策変更をする際に黒田日銀総裁が説得力のある説明をできないのであれば、日銀総裁の首を挿げ替える必要が出て来る(もちろん黒田総裁の前任の白川総裁の時のように自発的辞任という形をとることになるが)。

しかし、黒田総裁の辞任は「異次元の金融緩和」の限界を認め、放棄することであるから金融市場に大きな影響を与えることを覚悟しなければならない。

Next: 日米交渉は「応じるも地獄、拒否するも地獄」。2019年の日本はどうなる?

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