fbpx

低ランクだと結婚できない…中国人に聞いた「信用スコア社会」の実態と芝麻信用の影響力=岩田昭男

都市部の若者にとって欠かせないゴマ信用

──ゴマ信用のようなものができて、中国社会全体が活気づいているという人もいます。

A:それはないと思いますが、最初にお話ししたように、みなさんが社会的信用度を評価する手段として注目しているのは確かです。とくに若い人がそうです。

──先ほどお聞きしたように、点数はわからないわけですね。

A:本人とアリババ以外はわかりません。友人や知り合いが何点なのかは気にはなりますが。何を気にしているかというと、どの大学を出たか、クルマを持っているか、不動産を持っているかなどで、これらを証明するたとえば運転免許証、自動車交通許可証、不動産取引の許可証をゴマ信用に提供すると点数が上がります。

不動産をたくさん持っていれば点数はグーンと高くなります。銀行からローンを受けるときと同じで、不動産が担保になるからです。

──ということはアリババは銀行のようなものですね。

A:お金を回しているという意味で金融機関になっています。

──多くの人が点数をアップするために、こうした個人情報をゴマ信用に提供しているわけですね。

A:生活を便利にしたいと考える人はそうです。昔のままでいいという人、たとえばお年寄りの方は、ペイメント(支払い)はアリペイやウィーチャットペイを使いますが、金融商品やローンに関心がなければ個人情報をゴマ信用に提供しようとは思いません。 

都市部に稼ぎに来ている若い人たちにとって結婚の前提条件のひとつはマンションを持っていることですが、手持ちの資金や親が援助してくれるお金で足りなければ、ローンを組まなければなりません。ですからゴマ信用の点数に関心を持たざるをえません。

──結婚を考える若者にとって、とても大事なものなわけですね。

A:いまの中国ではお金がなければ結婚はできません。中国は物価が上がっていますから、普通の人がマンションを買おうとすればローンを利用するしかありません。銀行にローンを申し込むときにゴマ信用を使っていて点数が高ければ、手続きに必要な書類を出さなくてもすむ場合もあります。

──そうしたことが行われるようになったのはいつ頃からですか?

A:現在の中国は新しいものを受け入れやすい社会になっています。ゴマ信用はアリババグループの信用管理機構という会社が行っている事業です。信用管理機構の設立は2015年1月です。

──まだ4年しかたっていないわけですが、あっという間に広まったのですね。

A:日本で住民票を移すとなると、前の住所を書いて役所に届け出なければならないはずですが、中国の場合、ゴマ信用を利用していれば前の住所もその前の住所も登録されているので、わざわざ公的機関に行って手続きする必要はありません

高収入・マナー順守が高得点の秘訣

──ゴマ信用が政府のお墨付きを得ているわけですね。ゴマ信用の点数化の基準について伺いたいのですが、点数が高い人はどんな人なのでしょうか。たとえばローンの返済で滞納がないとか。

A:返済履歴はファクターのひとつにすぎませんが、毎月の返済額が5,000円だとして、それを毎月きちんと返していくと月に1ポイントずつ上がっていきます。上限があるのかどうかはわかりませんが。あとは公共料金や光熱費などをちゃんと払っているか、安定した収入源を得ているかなどが、点数に反映されます。

──サラリーマンは有利ですね。フリーターはだめですか。

A:中国の場合、フリーターだから貧乏とは限らないのです。フリーターだからお金持ちという人がいる。いいクルマや不動産を持っていて点数が高い人が多いのではないでしょうか。フェラーリどころかもっとすごいクルマを持っています。

──シェアリングの自転車をちゃんと返す、というのはいかがですか。

A:公共に対して面倒なことをしない人、つまり公共のマナーに反したことをしない人には点数をプラスしています。そうして点数が上積みされて信用度が高くなった人は、デポジットや予約なしでも身分証明書を持って駅に行けばすぐに切符を買えます。ものすごく急いでいるときはスマホを改札にかざせばそのまま入れます。あとで代金を払えばいいのです。

無人のコンビニもあってそこはまさに顔パスで商品を買って(持って)店を出ることができます。

──そんな中国と比べると、日本での暮らしが不便だと感じることはないですか?

A:コンビニで現金で支払うのは大変ですね。最近はできるだけアリペイを使って買い物をして、クレジットカードが使えるところではカード決済にしています。

日本と中国の両方で事業をしているので、中国にしばらくいて日本に帰ってくると、「あれっ、財布を忘れた」ということもよくあります。

──中国から観光で来られた方は大変ですね。

A:いまはマツキヨ、ドン・キホーテなどはアリペイが使えるなど、アリペイかウィーチャットペイのどちらかが使える店が増えています。食事や電車に乗るはまだまだですが。私は日本ではインバウンド関連の仕事もしているのですが、Suica(カード)をつくってチャージすることを勧めています。Suicaは日本でつくって中国に送ることもできますし、空港で渡すこともできます。

──日本での移動にはSuicaがあったほうが絶対便利です。そのほかに日本で困ることはありますか。

A:日本と中国の大きな違いは、「マイナンバーカード」です。日本にもマイナンバーができましたが、中国ではずっと以前からあって身分証明書になっています。マイナンバーカードのなかICが入っているので、カードをタッチすれば電車にも乗れます。マイナンバーカードが乗車券にもなるわけです。

──タイプA/Bの非接触ICが使われているわけですね。欧米でも同じようにクレジットカードで電車に乗れようになっていますが、SuicaはタイプA/Bではなくフェリカを採用しているので、それができません。

A:中国ではアリペイと身分証明がつながっているのでチケットを買って改札を通ることができます。

Next: 電子決済と信用が結びついた中国は、日本のPayPayをどう見ている?

1 2 3 4 5
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー