米韓にできた大きな溝
韓国の文大統領は、できれば南北で話しを進めたかったのでしょう。しかし、それは物理的にはできなかった。
仕方なく、米国に依頼し、韓国の非核化と北朝鮮の民主化を進める方を選んだということです。
一方、米国の方は、いずれ韓国からの米軍撤退も視野に入れながら、北朝鮮との交渉を進めることになるでしょう。
在韓米軍の駐留経費の負担に関する協定の期限切れもあります。ここの部分は早めに結論を出したいところでしょう。
しかし、韓国の出方がよくわかりません。文大統領の最近の言動も不可思議なところが見えます。
対北朝鮮政策で米韓に溝があるようです。
こうなると、トランプ大統領が相当の強権的なイニシアチブで交渉を推し進めないと、話が進まない可能性もありそうです。
とはいえ、北朝鮮の非核化は決まっている話ですので、あとは時間をかけるのか、そうでないのかの違いです。
米国はアジアへの関与を緩めていく
また、米韓がお互いの信頼関係を構築できるかにも注目しておく必要があるでしょう。米軍撤退以降も、韓国に朝鮮半島を任せておいてよいのか、ということです。
もっとも、基本路線としては、米国はアジアへの関与を徐々に緩めていく可能性が高いと考えています。
19年には、金委員長がソウルを訪問することになるでしょう。米朝首脳会談の前のおぜん立てとして、このようなイベントが仕掛けられる可能性があります。
トランプ氏大統領は、「北朝鮮の核兵器はもはや脅威ではない」と宣言していますが、北朝鮮による核分裂物質の生産は続いているようです。
昨年11月には新たな「超近代的な戦術兵器」の実験を行っているとの報告が上がってきています。
金委員長は新年の演説で米韓合同軍事演習の終了を求めていますが、これについてはトランプ大統領も南北首脳会談の円滑化のために一部同意しています。
また、金委員長は米国政府に対して、「外部からの戦略的資産」の配備についても「中止」するよう求めています。
金委員長が2つの要求を公言したのは初めてですが、米韓同盟の観点からすれば交渉の余地はないといえます。
しかし、すでに決まった話の中で、北朝鮮は依然としてこのような要求を行い、交渉の余地を残そうとしています。
そのため、金委員長には核開発計画を放棄する意図など全くなく、米韓軍事同盟を弱体化させる意図があるとの見方もあるくらいです。
悪あがきのように見えますが、米国の一撃で終わりであることは、金委員長は重々承知です。交渉の余地がないこともわかっています。
つまり、すべては演出です。
米国はいずれ在韓米軍の撤退を視野に入れているわけですから、16年に北朝鮮や中国、韓国の反対を押し切って韓国内に配備したTHAAD部隊の撤収もありうるわけです。
これを提案することで、非核化に向けた表面上の交渉がうまくいくように見せかけることができます。
米国にとっても、既定路線の部分がありますので、痛くもかゆくもないでしょう。