過去、国連機関に持ち込まれると日本は分が悪い?
木村幹氏が言っているように、国連機関に持ち込まれた日韓の歴史紛争では、日本に分が悪く、日本側の評判が非常に悪い。
年を追う毎に日本側の主張の反動性が露わになり、孤立化し、世界から異端視されている現状にある。反動性とは、戦後の国連体制の秩序的基礎を認めない極右のイデオロギー性と言い換えてもよく、また、反ジェンダー・反人権の性格が際立ったところの、国際社会における非常識性と言ってもいいだろう。
これら、ILO、国連人権理事会をめぐる過去の調査と審理と報告が、ICJが問題を裁くにあたっての所与である。
いわば「下級審の判決」で、関係する国連機関の多くの委員や職員が、日韓の歴史問題について検討し、論点整理し、公平な立場で勧告を出してきた。これらが有意味な知見として参考にされるだろう。
徴用工問題を持ち込まれたICJ判事団は、日本が正しいか、韓国が正しいか、どちらかに軍配を上げなくてはいけないが、判事たちにとって、それは荷が重い面倒な任務で、判事を出した国が日韓どちらかから恨まれることになる。
だから、一番いいのは、両国でよく話し合って和解に歩み寄れという結論で、ILOもその線でマイルドな勧告を出してきた。
すなわち、客観的状況としては、必ずしも日本側勝訴が確約されているわけではない。
注目すべき1998年「ILO報告書」の一節
私が注目するのは、1998年のILOの報告書の中の次の一節である。こう書いている。
「これらの所見に応えて、日本政府は、その報告において、日本政府が植民地支配を通じてもたらした損害と苦難について、韓国政府に繰り返し遺憾の意を表明してきたと述べている」。これとは、1995年の村山談話を指すだろう。
ILOの報告書をサーベイし、ICJの判事たちは村山談話の存在を知るはずだ。そして、1995年の日本政府の宣言と現在の日本政府の主張の乖離に気づくはずだ。
そこに、「現在取り組んでいる戦後処理問題についても(略)ひき続き誠実に対応してまいります」の文言があることを見つけるだろう。さらに、2002年の日朝平壌宣言の文面も見るだろう。