政府は簡単明瞭なことを言って田舎の人を誤解せしめている
いずれにしても、もし安倍首相が再選を果たして、仮にも憲法改正が実現すれば、次の世界大戦の軍靴の足音が聞こえてくるようになるでしょう。日銀の雨宮副総裁の任期は、平成35(2023)年3月19日までです。彼は、その軍靴の足音を聞くまで安倍政権を支えていくつもりなのでしょうか。
安倍政権は「公約の9割で成果を上げた」と誇らしげに成果を強調していますが、であれば、ここまで日本が破壊されることはなかったでしょう。もはや厚顔無恥もここに極まれりです。
アベノミクスによる名目GDPの水増しが明らかとなっても、側近たちには一向に怯む様子が見られないところを見ると、将来の出世を当て込んでの官僚による“忖度合戦”、“水増し合戦”は、今後、ますます大っぴらに展開されるようになっていくはずです。
菅直人が首相のときに「東大閥は潰しておくべきだった」と言ったとかで、ますます官僚の反感を買ってしまいましたが、まもなく国民にも、それが分かるでしょう。
日本では、米国より10年早くバブルが崩壊しました。大正8年の「大正バブル」の崩壊です。日本人が最初に経験した本格的なバブル崩壊は、おそらく、この大正バブル崩壊でしょう。
原因は、第一次世界大戦で連合国側についた日本が勝利、戦後の好景気によって加熱する一方の狂乱投資をコントロールできなかったことにあります。
そのときの日銀総裁、井上準之助(のちに暗殺)は、数多くの著書のひとつ『戦後に於けるわが国の経済及び金融』(絶版)の中で、バブルがどのように形成されていったのか、以下のように話しています。
バブル崩壊を受けて、この際における日本に有識者、いわゆる先達の師が、政治家といわず、実業界といわず、ことに銀行界の人が非常に態度が悪かった。
(バブルに導き、これを破裂させた)新聞・雑誌の論じておりますところも実に言語道断であります。
これは、銀行の当局者の重大なる責任と考えており、いったい何があったのか、その実例をお話しします。
……非常に有力な人であるから、この言は信じておかなくちゃならぬ、ということで、自分の田に勝手に水を引いて勝手な理屈をつけて投機をさせる。そういうことは世間に伝播します。
また、(バブルが崩壊した)大正8年6月から大正9年3月までの、いわゆる世の中の先覚者の言動が無責任極まっておる。
財界人は、この景気はどこまでも続くものである、というような簡単明瞭なことを言って、田舎の人を誤解せしめております。
出典:『戦後に於けるわが国の経済及び金融』(絶版) 著:井上準之助/刊:井上準之助論叢編纂会
井上準之助は、「経済界と銀行家、新聞が結託して投資をやったことのない素人を株式投資に引きずり込んで、最後のババを引かせた」と言っているのです。
虚偽データで国民を欺く日本政府とメディア
今の日本の経済界はといえば、日銀と政府による株の買い支えに甘んじて国際競争力を失うばかり。
名目GDPを捏造するだけでは飽き足らず、安倍政権発足時から実質賃金が下がり続けているにも関わらず、官房長官は「景気は引き続き緩やかに回復している」と、事実と反対のことを臆面もなく述べるだけで、メディアのほうもまた「景気回復ー戦後最長の可能性」と、誰もが首をかしげるような、およそ実態とかけ離れた報道を続けています。
大正バブルのとき、無知な国民は、お偉い先生方が口を揃えて「景気拡大は、まだまだ続く」と言っているから、「それなら銀行から虎の子を引き出して株を買おう」と、最後の泡沫をつかまされて大損させられたのです。
「でも、アベノミクス下では、誰も株を買ったり、国債を買ったりしていないから、私たちには関係ない」と考えている人がいるとすれば、確実に経済崩壊をサバイバルできない人でしょう。