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軍事産業の弱体化にトランプが大慌て、北朝鮮のレアアース争奪戦が米国の死活問題に=高島康司

オバマ政権の失敗した対応

もちろん、アメリカもこの状況を黙って見ていたわけではない。状況の深刻さはさほど感じていないようではあったが、2012年にオバマ政権は、レアアースを中心に採掘と精錬を行う企業の設立を後押しした。その結果、約400の企業がアメリカやカナダで新規に設立された。

しかし、そのうち実際に操業できたのは5社に止まり、一定水準のレアアースの産出にこぎつけたのは、なんと2社だけであった。そして、そのうちの1社は倒産した。中国企業のテクノロジーの高さ、そして中国産レアアースのコストが安いことが原因だ。

また2015年には、最後に残っていたアメリカの老舗、「モリコープ社(Molycorp Inc)」が破綻した。後に中国企業の資金援助で再建された。これで「モリコープ」は実質的に中国企業に買収され、その一部になったといってもよいだろう。

これはまさに惨憺たる状況である。いまはレアアースを採掘し産出できるアメリカ企業は実質的に存在しない状況なのだ。

トランプ政権になってやっと分かったこと

現在のトランプ政権はこうした状況にはるかに強い危機感を持ち、2017年から特に軍需産業の現状を把握することに努力した。レアアースやレアメタルの供給問題は広く知られておらず、鉱業専門誌や国防専門誌にときおり記事が掲載されるくらいで、米政府も軍需産業の供給状況については包括的に把握できていなかった。

そのようななか、2018年9月に新しい報告書がトランプ政権に提出された。これは内容が非公開の報告書だったが、10月にその一部が公開された。2017年9月、トランプ大統領は「大統領令13806号」を出し、アメリカの国防産業の実態の調査を命じた。この報告書は、これに対する調査結果として提出されたものである。

この報告書は、「合衆国の国防産業と製造業におけるサプライチェーンの弾力性調査とその強化に向けての報告書(Assessing and Strengthening the Manufacturing and Defense Industrial Base and Supply Chain Resiliency of the United States)」という非常に長い題名の報告書である。

これは国防総省を中心に、あらゆる省庁が協力して編成したタスクフォースによる報告書である。目的は現在の国防産業の産業的な基盤を徹底して調査し、最先端の軍事力の維持が可能であるか査定したものだ。国防産業の基盤の包括的な調査としては、60数年ぶりになるとのことだ。

その結果、300ほどの領域でアメリカの軍需産業の劣化が進行しており、なかでもレアアース供給の90%が中国に依存している事実が、はじめて明らかになった。

Next: なぜ米国の軍事産業は劣化したのか?

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