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軍事産業の弱体化にトランプが大慌て、北朝鮮のレアアース争奪戦が米国の死活問題に=高島康司

そもそもなぜこんな状況になってしまったのか?

しかし、こうしたアメリカの軍事産業をすぐに立て直すことは非常に難しい。以前にも書いたように、レアアースのサプライチェーンの再構築には、15年くらいはかかると見られている。

実は、軍事産業の基盤でこのような事態が進行していることは、トランプ政権になってからはじめてその深刻さが認識されたといってもよい状況なのだ。先の「合衆国の国防産業と製造業におけるサプライチェーンの弾力性調査とその強化に向けての報告書」のような複数の調査が行われ、現状が包括的に明らかになったのだ。

しかし、そもそもなぜこのような状況に陥ってしまったのだろうか?

軍事的な覇権の維持に最大の関心がある歴代の米政権であれば、このような状況に陥ることは予測できたはずである。

1980年代の初頭まで、アメリカは埋蔵量でも産出量でもレアアースの市場を世界的にリードしていた。もちろんこの当時のレアアースの需要は、第4次産業革命が進む現代よりもはるかに小さかったものの、カリフォルニア州にある「マウンテン・パス鉱山」は世界有数のレアアースの鉱床として知られ、供給を実質的に独占していた。

このとき、「マウンテン・パス鉱山」のレアアースは、放射性物質のトリチウムの固まりから採取されていた。トリチウムの固まりからレアアースを取り出すためには、水で金属を洗い流し、レアアースを分離しなければならなかった。このとき、かなりの量の放射性物質が発生し、地中に埋めるなどして廃棄された。

しかし、カリフォルニア州政府から、これが同州の環境保護の規定に違反するとして、廃棄をやめるように命じられた。もちろんこれを廃棄しないで放射性物質に耐性のある特殊なコンテナなどで保管する方法もあったが、当時のレアアースの国際価格では利益が期待できず、コスト高のため採掘と産出そのものが放棄された。

一方、当時の中国には、カリフォルニア州のような放射性物質に対する規制はなかった。そのため、レアアースの採掘も産出も自由に行える環境だった。そうした状況に新興企業が殺到し、レアアースの生産が拡大した。政府の後押しもあり、掘削と産出のためのテクノロジーは急速に高度化し、レアアース・レアメタル産業は一挙に拡大し、いまに至った。

本気のトランプ政権と北朝鮮のレアアース

これがいまアメリカのハイテク・IT産業のみならず、アメリカの軍事覇権の基盤である軍需産業がおかれた深刻な状況なのだ。

このメルマガではこの深刻さを何度か書いているが、我々の予想する以上に深刻な状況だ。もしアメリカが引き続き軍事覇権の維持を目指すのであれば、世界のレアアースの供給を独占できるようなサプライチェーンの構築は急務である。

「一帯一路」を主軸にした中国の発展を抑止すると同時に、レアアースの採掘に関連したテクノロジーを早急に高度化して、世界のレアアースの産出拠点をアメリカの影響下におかなければならないだろう。どんなに急いでも、中国の供給独占を打破できるかどうか分からない状況だ。

そうしたときに、北朝鮮でレアアースの鉱床が発見されたのである。試掘が行われたどうかはっきりしないし、またレアアースの存在を公表したオーストラリアの会社も北朝鮮政府のダミーである可能性が高く、いまのところ埋蔵量ははっきりしない。だが、北朝鮮に相当量のレアアースが埋蔵されていることは事実のようだ。

もしそうであるなら、トランプ政権としては、北朝鮮が中国の配下に入ることはなんとしてでも阻止しなければならないはずだ。アメリカの将来的な軍事覇権は中国、そしてその第一の同盟国のロシアに阻まれる可能性が出てくる。キム・ジョンウンと何年も時間のかっかる交渉を、これまでのように悠長に行っている時間的な猶予はないはずだ。

一方中国は、北朝鮮を「一帯一路」に確実に埋め込んで中国東北地域の経済と一体化させながら、レアアースの支配権を独占するはずだ。これでアメリカの軍事的な弱体化を図ることができる。

Next: 北朝鮮で民衆蜂起による革命を起こす計画がある

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