なぜ第三者割当増資にしないのか?
初めに、なぜこんなややこしいことをしているのか、ということを理解するのが大事かと思います。
上でも書いたように、上場企業であるのだからストレートに新株を発行して、マーケットで売れば良いのではと思う方も多いかと思いますが、それができない事情があります。
1. 公募増資等により一度に全株を発行すると、一時に資金を調達できる反面、1株当たりの利益の希薄化も一時に発生するため株価への影響が大きくなるおそれがあると考えられます。
2. 株主割当増資では希薄化懸念は払拭されますが、割当先である既存投資家の参加率が不透明であることから、十分な額の資金を調達できるかどうかが不透明であり、今回の資金調達方法として適当でないと判断いたしました。
3. 第三者割当による新株発行は即時の資金調達の有効な方法となりえますが、公募増資と同様、同時に将来の1株当たり利益の希薄化を一度に引き起こすため、株価に対する直接的な影響が大きいと考えられます。
マザーズなどの新興市場に上場していて、かつ取引量があまり多くない会社の場合、一度に多くの新株を発行してマーケットで売りに出すと、売り圧力が強くなりすぎて、株価が一度に下がりすぎる可能性があります。
あるいは、本来発行したい量の株式が売却しきれずに、調達したかった金額が調達できないという可能性もあります。
今回のように、新株予約権を金融機関に購入してもらうという形をとることで、金融機関が、大量の株式を一度に売らないようにするという、「バッファ」の役目を担うことになります。
金融機関はバカではないので、入手した株式を一度に売ってしまうと、売り切れ前に株価が下がりすぎるので、株価への影響を見ながら、少しずつ売却をするであろうということが期待されています。
金融機関には「バッファ」の役目を担ってもらう代わりに、8%程度のディスカウントした価格で新株予約権を行使できるようにするというわけです。
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