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年金は政府の皮算用で崩壊へ。なぜ今、国民に「老後2,000万円の不足」を突きつけたのか

予想を下回った「合計特殊出生率」も、試算は見直さず

いくつもの問題を指摘していますが、まずは、「収支相等」を計算する上で重要な「特殊出生率」の数字に問題があることを指摘しています。

小泉政権下で行われた「100年安心」年金制度設計に使われた合計特殊出生率は「1.32人」です。これは2002年発表数字になります。

合計特殊出生率とは、ひとりの女性が生涯に産む子どもの数のことで、この数値が低いと少子化が加速することになります。

理論上、合計特殊出生率が「2人」であれば人口は横ばいを示し、これを上回れば自然増、下回れば自然減になるとされています。もろもろの条件もあり、医療技術や栄養状態が相対的に良好な現代先進国において、自然増と自然減との境目はおよそ「2.07人」とされています。

当時のコラムでは、東京都の合計特殊出生率が「1人」を割り込んで「0.9987人」となったことをトピックスと紹介しています。いまは「1.21人」となっています。

問題は、「100年安心」の年金制度改正案が衆議院を通過した後に、厚生労働省が、2003年の合計特殊出生率を、戦後最低だった2002年の1.32人を下回る1.29人となっていたことを発表したことだと指摘しました。

さらに2003年は、生まれた子どもの数は約112万4,000人で約3万人減少し、1899年に統計を取り始めて以来最低、年金改革法が前提とする予測を下回っていたということです。

これらは「100年安心」年金制度改正法案が衆院通過後の発表です。

このことに関し厚生労働省は「一時的な現象。年金制度を今すぐ見直す必要はない」としていました。

「名目賃金上昇率」も高く見積もり

さらに、当時コラムで、「収支相等」の収入の部分に当たる保険料計算において、名目賃金上昇率を今後長期的に年2.1%(内訳は物価上昇率1%、実質賃金上昇率1.1%)と想定している点を指摘しました。

当時、デフレ経済と呼ばれる環境下で、長期的にインフレになることが非常に想定しづらい状況ではなかったかと思われます。

「収支相等」で帳尻を合わせるには、年金給付額を見直さない前提に立てば、合計特殊出生率は高いほうがよく、経済状況も好転し賃金は上昇する前提で保険料を上げることが望ましい。

つまりは緒尻合わせの結果を良く見せるために、試算に必要なデータは良いほうがよいのは当然で、それこそ「帳尻合わせ」で作られた「100年安心」プランではないかという指摘でした。

18年の出生数は過去最低。想定以上に日本社会は崩れている

ちなみに、先日発表された合計特殊出生率は、前の年をわずかに下回る1.42人でしたが、去年生まれた子どもの数、出生数は91万8,397人と前の年より2万7,000人余り減り、明治32年に統計を取り始めて以降、最も少なくなりました

2004年「100年安心」プラン作成当時よりも、合計特殊出生率は改善されていますが、実数としての出生数は大きく減少し、賃金上昇率も、当時の想定どおりに毎年続けて右肩上がりに上昇し続けることはなかったということです。

政府が「100年安心」と訴えた以上、今の年金制度では国民の将来を守れないという論理展開はできるわけがなく、年金制度依存からの脱却意識を、別の角度から説得して持ってもらったほうが良いということで、今回の「2,000万円」の資産形成を呼びかけることになったのではと、「100年安心」年金プランを検証してきた者としては、どうしても穿った見方をしてしまいますね。

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