基本は米中「新冷戦」
同時に、トランプ大統領は習近平主席との間で、「新冷戦」を展開したいと考え、今後も長期的に中国に圧力をかけ、中国の構造改革を迫る予定です。
従って、すべてが解決して突然米中が融和的になる、と考えることはできません。米国が求める「構造改革」は、中国共産党支配の根幹にかかわるものが多く、中国がこれを受け入れれば政権維持が難しくなる難問が多くあります。中国にとって、米国の圧力で国有企業への補助金停止を決めれば、北京政府は体制維持が困難になります。
知財権侵害・技術移転の強要も、行政的に対応可能としても、これを法制化することには大きな抵抗があります。特に、事実上国有企業の実権を握る江沢民派は、これに強硬に反対しています。北京政府が米国に譲歩すれば、中国内の対立が激化し、別の不安定要素となります。
また、トランプ氏の選挙戦略上も、中国に強い姿勢を見せることが選挙に有利になるとの理解もあり、今後通商問題以外にも様々な問題をとらえて中国を攻めたてる可能性があります。中でも、香港での容疑者条例改正に伴う大規模デモなどの混乱を契機に、中国の人権問題を問い、また制裁を科す北朝鮮企業と取引をした中国企業、国有銀行の問題が問われます。
中国の人権問題
香港での混乱には、背後で江沢民派と米国ネオコンが、北京政府を揺さぶるためにあえて混乱を煽った面があり、トランプ・習主席の側からは一線を画す面もあります。
しかし、政権内からはポンペイオ国務長官やボルトン補佐官がこれを突いてくる可能性があり、トランプ大統領も選挙用にこれを政治利用する可能性は排除できません。
制裁違反企業、銀行の扱い
大阪G20直前に、香港のフロント企業が中国の大手国有銀行を通じて、経済制裁の対象となっている北朝鮮の国営企業と1億ドル強の取引をしていたことから、ワシントンの連邦地裁から召喚を受けていたことが報じられました。
制裁に違反した企業は米国内の資産が凍結されますが、銀行の場合は米国の決済システムから排除されることになり、事実上ドルが取れなくなります。
これは中国経済はもちろん、北京政府にとっても大きなダメージで、トランプ政権は中国との交渉において大きなカードを手にしたことになります。
そのカードの使い方いかんでは、中国経済には関税とは違う形で、つまり金融面での制約から経済が落ち込むリスクが高まります。