ITが定義するコモディティ業務と従業員のイメージするコモディティ業務が乖離
これは銀行などの金融機関でもいえることですが、いくつかのITシステムを連携させて業務プロセスを人力で守ってきた人たちは自他ともに認める業務エキスパートであり、自分の業務は決してコモディティ(代替可能なサービス)ではないと考えがちですが、実際にはそうした知見もロボットとAIの実装によってほぼ淘汰され、コモディティ業務の一部に過ぎなくなってくることを忘れてはならない状況です。
RPAの導入がらみでこうした企業の現場でヒアリングをしますと、必ず働いている人間の知見やプライドと、RPA導入との間に大きな乖離があることが感じられるものですが、実は業務のコモディティ化は想像以上のところまで進んでいるのです。
また、RPAの導入で浮いた人材をまともな業務につけてさらに人的な精度を高めるという話も、ホワイトペーパー上ではそうなっているものの、リアルな組織環境ではかなり異なる動きになっている点も気になります。
生産性は上がっても給料はさらに下がる時代
今回の損保ジャパン日本興亜のケースは、かなりの企業が興味深く見守っているはずです。
これがひとつの日本型「ITトランスフォーメーションモデル」として定着した場合には、ITとAIによる生産性の向上は、すべからく年収の減少につながるリスクが出てくることになりそうです。
今はとくに大手企業でもRPAの実装と関係ないところで、45才以上のいわゆるバブル入社組の人減らしが急激に進んでおり、著名な上場企業の希望退職者募集だけでもすでに7万人程度出ているわけです。
これでは老後に2000万円足りないどころか、老後に行きつくまでの資金すら足りない時代が到来していることがわかります。
国内では何と言っても、文句を言わずに天引きされて税金を払ってきたのは、ほかならぬサラリーマン世帯です。
ここから働き方改革の旗印でIT利用の生産性アップがはかられた場合、結果的に仕事を奪われる、年収が大幅ダウンするサラリーマンが続出して、相当暗い社会が現実のものになりそうです。