商業銀行部門を軸足に考えるも、シェアの割り込みは厳しい見込み
ドイツ銀行が欧州を基盤に投資銀行部門(日本で言えば証券会社)のディーリング部門を縮小して、商業銀行部門(日本で言えば普通の銀行)の企業取引を軸にして青写真を描いているようだ。
だが、地元のドイツ国内市場は公的資金や地域金融機関が高いシェアを締め、そこに割り込んでいくのは難しい。隣国に仏パリバ銀行がある。イタリアのウニクレディトなどとの競争も激しい。国内の商業銀行部門(日本で言えば普通の銀行)が儲けにくいから20年前に投資銀行部門(証券会社)のディーリング・ブームに走った。これが間違いのもとだ。山一證券や三洋証券がやって来た道だ。この部門の蹉跌をまず直し、銀行部門で立ち直ろうしているという。
だが、この先は視界不良である。だから投資のチャンスがあると筆者は見ている。株価で言えば、ドイツ銀行が危ないと言われ出してから約半値になり、6月はじめに「史上最低値段の6ユーロ前後」まで下がり、今は再建計画を発表したその期待から7ユーロまで少し戻している。ここからが正念場だ。
著名投資家ジョン・テンプルトンは約80年前に英国留学から帰ってきた若者だったが、生命保険に入れるだけ入って、その生命保険の保険証券を担保として借りられるだけ金を借りて(伝記に、「自分の命を担保として」と書いてあるが)、1ドル未満の株を104銘柄買った。日本で言えば額面割れの株というところであろう。アメリカが第2次世界大戦に参入するという暴落の最中であった。
その後数年で彼は、104銘柄の中で破綻する銘柄も少しはあったが、合計したら巨富を得た。そして彼は企業に就職することなく、投資顧問業と自己の投資で生涯を優雅に暮し成功裡に2008年(だったと思う)に,カリブ海の別荘で知的で質実な大投資家らしい生涯を閉じた。
ウォール街に伝わる名文句や格言は、ジョン・テンプルトンの言ったことがそのまま残っているケースが多い。
彼のマネをするわけではないが筆者は、学ぶべきところは大いに学び(「学ぶ」は元来「真似ぶ」から来たという)ドイツ銀行株を大底買い銘柄候補の一つに加えたいと思っている。ドルで買える証券会社が日本にある。ドイツに口座を開く必要はない。
だが、まだ早いと思っている。しかし、「まだはもうなり」という格言もある。一体どっちなんだ、早く決めろ、というのが「二見に堕す」(禅語)ということで二者択一の窮地に自分を追い込むだけで正解は得られない。ここは考えかつ迷うところである。
もしドイツ銀行がECBの支援を入れてECBからの監視の手が伸びてくるのを嫌って、あるいは介入を嫌って、一騒動でもあれば買いの好機と思いたい。
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第1部;当面の市況
第2部;中長期の見方
第3部;個別銘柄の見方──今回は銀行業とドイツ銀行株
第4部;「太陽黒点と経済危機」──「ジェボンズの太陽黒点説」ではなく
第5部;読者との交信蘭
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※本記事は有料メルマガ『山崎和邦 週報『投機の流儀』』2019年7月21日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
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『山崎和邦 週報『投機の流儀』』(2019年7月21日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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大学院教授(金融論、日本経済特殊講義)は世を忍ぶ仮の姿。その実態は投資歴54年の現役投資家。前半は野村證券で投資家の資金運用。後半は、自己資金で金融資産を構築。さらに、現在は現役投資家、かつ「研究者」として大学院で講義。2007年7月24日「日本株は大天井」、2009年3月14日「買い方にとっては絶好のバーゲンセールになる」と予言。日経平均株価を18000円でピークと予想し、7000円で買い戻せと、見通すことができた秘密は? その答えは、このメルマガ「投機の流儀」を読めば分かります。