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米景気に陰り、ドルの弱体化、中国の台頭…それでもアメリカの時代は終わらないワケ=山崎和邦

「世界の主導権を取る」とはどういうことか

中国のGDPと軍事費が10年後には米国を抜くという予測がある。その時、米主導の世界秩序は崩壊するのか、という問いがある。

2008年に中国はアメリカ衰退を断定した。

世界秩序を米が一国で仕切ることは難しくなる、ただしアメリカの世紀は続く」、これがハーバード大学教授、リベラル派を代表する知識人ジョセフ.S.ナイの結論である。

欧州・日本・ロシア・インド・ブラジルを分析して単独で米国の「覇権」を脅かすことは不可能で、何カ国かで組んで米国を凌ぐ可能性も低い。

しかし、米国が内部から崩れて行くリスクはある。

米国有利が揺るがないと考える根拠は経済力・軍事力だけでなく、第3のパワーたる「ソフトパワー」が国力を左右するという思想を筆者は支持してきた。

トランプは敢えて積極的にそれを放棄した。

「ソフトパワー」とは日本にはなじまない言い方であるが、アングロサクソン民族には長期間の植民地経営で培った国家運営のノウハウとでもいうDNA的にもなった能力がある。

こう考えている筆者はジョセフ.S.ナイの結論に与するものである。

30年前、日本の一人当たりGDPが米国を追い越した時、日本は完全にアメリカをキャッチアップしたと日米ともに言われたことがあった。アメリカのアナリストの一部は、日本は核武装した超大国となって日本が主導する太平洋ブロックはアメリカを排除し、日米は戦争にまで発展すると真面目に予想する者も出た。日本の目覚ましい経済的発展が異常な強さでアメリカを圧迫したのだ。

過去の急速な経済成長にのみ基づいて、国力総体の成長を過去現在の延長線上で直線的に予測することが如何に過ちであったかを示す好個の事例である。

その後、日本は主として政治不作為と金融政策失敗によって20年間の低成長に苦しんだ。

国際間の権力闘争というものは、自国の望むままに他国に影響を及ぼす能力のことである。ガルブレイスの権力論によれば権力の発動の仕方に3つある。1つは脅威を与える威嚇権力、2つ目は報償や名誉を与える報償権力であり、3番目は彼がCondithoned Powarと呼ぶもので彼の著作「権力の解剖」(J.Kガルブレイス著、山本七平監訳、日本経済出版社)によれば「条件付け権力」と和訳されているものである。ジョセフ.S.ナイによれば「ソフトパワー」であり、ヒラリー・クリントンが言った「スマートパワー」である。

威嚇権力こそ、説得力や魅力や文化力によって国威を張るという、パワーである。それ故1の具象たる軍事力、2の淵源となる経済力、これだけで国威を測るべきではない。例えば19世紀末にアメリカが最大の経済大国となったときも、グローバルな勢力図のうえでは主要プレーヤーとはみなされなかった。1880年代のアメリカ海軍はチリの海軍より小さかった。そのアメリカをして経済力を軍事増強に結びつけたのはセオドア、ルーズベルトとウッドロ-、ウイルソン両大統領だった。アメリカが世界勢力の上で主要プレーヤーとなったのはそれ以降である。

つまり報償権力の源にあたる経済力を以て威嚇の増強に向けたことと、それを許容するアメリカ文化(つまりソフトパワーの一部)であった。

Next: これまでに、アメリカの栄華を脅かしてきた国とは?

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