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米景気に陰り、ドルの弱体化、中国の台頭…それでもアメリカの時代は終わらないワケ=山崎和邦

「アメリカの世紀」の存続期間

ヘゲモニーと言う概念は不正確だが、これを「パワーをもたらす資源の保有で優位にあること」又は「他者に対してルールを設定する行動」や「自らが好む結果を得る力」とする、この曖昧さの故に、それはいつ始まっていつ終わったかを計測できない。が、もし、アメリカにそれらがあったとしたら、それはアメリカ経済が世界全体の概ね半分を占めていた1945年に始まり、世界シェアの4分の1に低下した1970年代までだったということになる。

経済力だけで見ればそうなる。

大英帝国が200年続いたのに、アメリカは未だ「唯一の超大国」になってから3分の1世紀だ。

アメリカの世紀は続くが、アメリカの主導力は現在のものとは違ってこよう。

大英帝国の世紀は産業革命から始まったとしよう。世界最大の工業国になったところからであろう。アメリカの世紀を仮に世界最大の経済国の期間だとすれば概ね20世紀だということになる。

世界銀行の一部の試算によれば、購買力平価ではGDPは中国がアメリカを抜いたという。しかし、世界の主導国家とは必ずしも経済力だけではない。

筆者は経済力だけでなく、軍事・ソフトパワーまで含めて、ジョセフ.S.ナイが言うところの「傑出Preeminence」「卓越性Primacy」を採りたい。

一国の手には余り、問題が多数存在して多国間で対応しなければならないようになっている。そして国家以外の主体、例えば国連・OPEC・ECB.IMF・OECDなどが持つ力が拡大することによって「アメリカの世紀」が続いていても、従前とは確かに違うという変化が起きていることは事実であろう。

歴史家たちは一世紀ごとに、支配的な地位にある国の栄枯盛衰を見出そうとしてきた。世界を主導する国は百年間で交代するという説もある。

ベネチュアは貿易航路が変化して対外的な衰退を余儀なくされたが、文化的な発展は続いた。古代ローマは侵攻してくる新興勢力に敗れたのではなく、ローマより弱い諸部族からの長期的な圧力で経済的に衰退して国力が衰退した。ローマは自分たちより弱いはずの非定住型の諸部族から略奪される羽目に陥った。これがジョセフ.S.ナイが言うところである。

中国のGDPと軍事費がいずれは米国を抜くという予測がある。その時、米主導の世界秩序は崩壊するのか、という問いである。

「世界秩序を米が一国で仕切ることは難しくなる、ただしアメリカの世紀は続く」、これがハーバード大学教授、リベラル派を代表する知識人ジョセフ.S.ナイも結論である。

欧州・日本・ロシア・インド・ブラジルを分析して単独で米国の「覇権」を脅かすことは不可能で、何カ国かで組んで米国を凌ぐ可能性も低い。

米国有利が揺るがないと考える根拠は経済力・軍事力だけでなく、第3のパワーたる「ソフトパワー」が国力を左右するという思想を筆者は支持してきた。(過去形で述べるのはトランプという破壊者が出てから後は別だ、という意味である)。トランプが出ても、例えば、アメリカには世界の学生や次世代を担う若者を留学に引き付ける文化がある。現に、中国共産党の子弟の多くがアメリカに留学している。

つまり、どの国よりも「求心力」を持っている。

原油と天然ガスでサウジアラビアを上回っていたソ連は世界全体の概ね半ばの核兵器を保有しアメリカより多くの兵員を擁し、プロパガンダは巧妙だった。

Next: アメリカの栄華は続く…そう結論付ける理由とは?

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