「アメリカの世紀」は続くがそれは変容する
NY株価が異例の長期間、高値圏に居座っているという事実は、NY市場がそれを敏感に嗅ぎ取っているものと解する。
アメリカの世紀は続くが、アメリカの主導力は現在のものとは違ってこよう。アメリカの主導力は絶対的なものではなくそれは「相対的な強さ」に変容する。
現にみられる現象でも、
1:アメリカのイラク攻撃以降、世界各国からアメリカへの信頼を失墜したし、
2:アメリカの経済は繁栄しているように見えても内部では深刻な問題を抱えている。NY株価の高値圏での長期保合はこれを象徴している。
3:アメリカの制止を聞かずに欧州主要諸国は先を争うようにして中国インフラ銀行AIIBに加盟した。
4:ウクライナ問題が生じたにもかかわらず、欧州各国は北大西洋条約機構の軍事予算を申し合わせた金額より縮小した。アメリカの言うことを聞かないのは中国とロシアだけではない。同盟国の中にも生じている。しかし、これらの現象を以て「アメリカの世紀は終わった」とするのは早計である。
2009年にオバマ内閣で国務長官を務めたヒラリー・クリントンが発表したオバマ外交の基本方針は「スマートパワー」であり、それは「ハードパワーとソフトパワーの賢明な組み合わせ」であるとした。
こういう第3のパワーを考慮に入れれば、安易にアメリカ衰退論に与しない方が聡明であろうということを以て本稿の結語に替えたい。
地政学的要因であろうとなかろうと、市場経済を動かす力は需給に勝る要因はない。そこで事実上の要因を上げれば世界経済は、原油・ドル・キンの上で動いている。この3つを制し得る国はアメリカしかない。アメリカは「軍事という暴力装置」だけでなく「市場」を使って「外交」を遂行する唯一の超大国として存続する。
よって、アメリカ衰退論を本気で信ずる者は天に唾する者であるとまで本稿は言いたい。
主要な参考文献5冊・50音順
1;「アメリカの世紀は終わらない」ジョセフ.S.ナイ著、村井浩紀訳、日本済新聞出版社、2015年刊)
2;「権力の解剖」(J.K.ガルブレイス著日本経済新聞社、1984年刊)
3;「なぜ大国は衰退するのか」(グレン・ハバード著、日本経済新聞社、2015年刊)
4;「秘密裏に遂行される『世界覇権の100年戦略』」マイケルピルズリー著、野中香方子訳、日経BP社、2015年刊)
5;「文明が衰亡する時」(高坂正堯著、新潮社、1985年刊)
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※本記事は有料メルマガ『山崎和邦 週報『投機の流儀』』2019年8月18日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
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『山崎和邦 週報『投機の流儀』』(2019年8月18日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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大学院教授(金融論、日本経済特殊講義)は世を忍ぶ仮の姿。その実態は投資歴54年の現役投資家。前半は野村證券で投資家の資金運用。後半は、自己資金で金融資産を構築。さらに、現在は現役投資家、かつ「研究者」として大学院で講義。2007年7月24日「日本株は大天井」、2009年3月14日「買い方にとっては絶好のバーゲンセールになる」と予言。日経平均株価を18000円でピークと予想し、7000円で買い戻せと、見通すことができた秘密は? その答えは、このメルマガ「投機の流儀」を読めば分かります。