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公募価格を割り込んだツクルバが、さらに投資評価を上げるために必要なこととは?

用事の特定

イノベーションを起こすための最初のステップは、ある状況下で顧客がなし遂げようとしている進歩を特定することです。そして、その進歩には機能的、感情的、社会的側面があり、どれが重視されるかは文脈によって異なってきます。また、用事を特定することにより、真の競合相手もみえてきます。では、同社の場合はどうなるのでしょうか。

今回は、同社グループが課題としてあげる「エージェントサービスのオペレーションの高度化・効率化」を取り上げます。同社グループはそれを、次のように認識しています。

当社は、これまでに開発してきた業務管理システム、蓄積してきたノウハウにより、エージェントサービスの生産性向上とサービス品質の両立を図っております。

しかしながら、今後の事業成長のためにはさらなるユーザー数の増加が必要であり、恒常的な収益性の向上を実現するためには、引き続きオペレーションの高度化・効率化が重要であると考えております。そのため、蓄積された顧客データ・業務データのさらなる活用、業務の自動化等の施策を実施してまいります。

顧客──スタートアップ、個人事業主、クリエイターなど──がなし遂げようとする進歩の機能的側面は「仕事をする場を確保する」ということ。感情的側面として、使用者としての顧客は「感覚訴求」「デザインや美観」「魅力」「癒し」といったことを、意思決定・購入者としての顧客は「コスト削減」「利便性」を重視するでしょう。また、社会的側面としていずれの場合も「つながりの提供」も重視するでしょう。

なお、同社グループは、シェアードワークプレイス事業における競争優位性については、次のように認識しています。

当事業においては、クリエイターをはじめとするフリーランサーや成長企業のニーズに特化し、ワークスペースの提供に加え、当該顧客ターゲットの嗜好に適したコミュニティ形成や支援サービスを統合して提供することで、類似する事業者に対する競争優位性の構築を図ってまいりました。

しかしながら、将来、資本力のある企業が当社と同様のポジショニングによる事業展開を行う場合など、当社の競争優位が凌駕された場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

体験の構築

用事が特定できたら、次になすべきことは、顧客がなし遂げようとしている進歩に伴う体験を構築することです。製品・サービスの購入時や使用時におけるすぐれた体験が、顧客がどの製品やサービスを選ぶかの基準になるからです。では、同社はどのような体験を構築すればいいのでしょうか。

顧客がシェアードワークプレイスを雇うとする際に障害になり得るのは、一つには、そのなかで横のつながりが乏しいことです。確かに、同社グループは「ワークスペースの提供に加え、当該顧客ターゲットの嗜好に適したコミュニティ形成や支援サービスを統合して提供することで、類似する事業者に対する競争優位性の構築を図ってまいりました」としています。しかし、「当該顧客ターゲットの嗜好に適したコミュニティ形成」というだけでは、必ずしも十分とはいえません。

クリステンセン教授たちは次のように指摘しています。

枠にとらわれない考え方をするには、自分のよく知っている分野のアイデアと、ほかの「枠」を足場とする人たちのアイデアを、結びつけなくてはならないことが多い。イノベータは多様な人たちとのネットワークを通してアイデアを探し、試すことに時間と精力をかけるうちに、物事を根本的に異なる観点からとらえられるようになる。

つまり、顧客の嗜好に適したコミュニティを形成しても、それだけで彼らが物事を根本的に異なる観点からとらえられるようになるとは限らないということです。

いずれにしても、こうした障害が取り除かれれば、顧客は「枠にとらわれない考え方をすることで、物事を根本的に異なる観点からとらえられるようになる」というすぐれた体験ができるようになるでしょう。

Next: 業績の評価が変化するような、行うべき取り組みとは?

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