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株価が割安な商社株のなかで、伊藤忠商事が唯一上昇し続けているのはなぜか=若林利明

今年の1月、5大商社の株価形成を比較検討しました。そこで今回は、その折紹介した三菱商事と伊藤忠商事をとりあげ、株価形成をレビューしてみます。(『資産運用のブティック街』若林利明)

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筆者プロフィール:若林利明
外資系機関投資家を中心に日本株のファンドマネージャーを歴任。現在は創価女子短期大学非常勤講師、NPO法人日本個人投資家協会協議会委員。世界の株式市場における東京市場の位置づけ、そこで大きな影響力を行使する外国人投資家の投資動向に精通する。著書:「資産運用のセンスのみがき方」(近代セールス社)など。

※本記事は有料メルマガ『資産運用のブティック街』2019年11月7日号を一部抜粋・再構成したものです。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

商社株でもっとも高い三菱商事と伊藤忠を比較してみる

株価のスイングファクター…過去の株価の軌跡から判断

今年の一月、5大商社の株価形成を比較検討をしましたが、ここではその折紹介した三菱商事と伊藤忠商事をとりあげ株価形成をレビューしてゆきます。

ここ数年、商社株の多くはBPS割れの状態(PBR1以下)で推移しておりましたが、一社だけ異なる動きを示しておりました。それは伊藤忠です。年初既にBPS1以上の株価でした。株価の絶対水準はEPSの水準を反映して三菱商事が高位にありますが、両社の上昇率を比較する為ここでは2009年末の両社の株価を1として、直近までの変化の軌跡をグラフ化しました。圧倒的に伊藤忠が勝っております。今年になってその差がより開く傾向があります。

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総合商社株の一般的な見方は、株価がBPS以下の水準にあり、配当利回りが高水準にある点です。かってBPS以下にある株価でもそのBPSの絶対水準のランクに商社株は忠実でありました。

この事実を反映して三菱商事が最も高い株価を形成してきました。EPSの比較においても三菱商事が最も高く、株価が他の商社より高い位置にある状態が普通でした。

ところが、その現象が破られる事態が発生しつつあるようです。総合商社の株価になるとそのサイズの大きさもあり、いわゆる“練られた株価”です。一時的要因で乱高下するような株価ではありません。こうして考えると伊藤忠の株価の動きは、少々驚きとも言えるものなのです。株価はリーマンショック以降の伊藤忠と三菱商事の株価の上昇率比較ですが、圧倒的ともいえる差が生じているのです。

総合商社の業績比較を再吟味…株価の決定要因は?

両銘柄を含めた総合商社の比較表を作成しました。2019年3月の実績、株価は直近(10月25日)です。株価の順位が支払い配当額の順位に比例しております。BPSの順位から見れば伊藤忠は4位です。伊藤忠の場合、株価が高い位置にあるので利回りは他の4社は4.5%前後にある中、唯一4%を割っております。それでも、直近の市場人気は三菱商事より高いという事になります。

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絶対額でみる株価水準では、三菱商事がEPSの水準を反映して高位にありますが、業績の伸長(EPSの伸び)をみれば、伊藤忠の方がより魅力的かもしれません。その辺の評価が伊藤忠の好調株価の背景にあると見られます。

伊藤忠の劣位にあるのは明らかにBPSです。前回のレポートで伊藤忠の配当に対する考え方が積極的であることに触れました。減配なしに期を重ねてきております。商事は、この動きに刺激されたのか、四年前減配のあと直近大幅に増配しました。

株価の示す所は、結局伊藤忠の配当に対する考え方を評価し、かつ収益の伸びることに対する期待が凝縮されているようです。総合的に将来の伊藤忠に期待を込めたというこになります。BPS1を下回る議論が商社株評価のおり話題となりますが結局、商社の場合も収益性が株価形成用要因として大きな要素となっていることが伺われます。

今後、伊藤忠のEPSの増加傾向がより高い次元で継続、それと共にBPSも増加してゆくことになれば三菱商事の株価を追い抜くことも視野に入ってくる可能性があるかもしれません。といってもこの種の会社のスケールからしても2、3年でできる簡単な話ではないことも事実でしょう。

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imege by : Pavel Kapysh / Shutterstock.com

資産運用のブティック街』(2019年11月7日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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