最近、相談の現場で感じるのは、いくら説明してもなかなか個人投資家の方に長期での投資を捉えてもらうのは難しいということです。その原因について考えます。(『億の近道』小屋洋一)
プロフィール:小屋洋一(こや よういち)
ファイナンシャルプランナー。株式会社マネーライフプランニング代表取締役。1977年宮崎県生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、総合リース会社に就職。2008年、個人のファイナンシャルリテラシーの向上をミッションとした株式会社マネーライフプランニングを設立。
個人投資家にとっての長期的に投資を考えることの難しさ
四半期ごとに顧客の運用状況についてレビュー
最近、相談の現場でいくつかあったケースで感じたことを書きます。
それは、いくら説明してもなかなか個人投資家の方に長期での投資を捉えてもらうのは難しいものだということです。
仕事でも何でも、やり方やテクニックなど短期的に成果が出ることに関心が向かい、人格形成や人脈形成など中長期的に成果を出すために必要なことに関心が向かいにくいのも同じことなのだろうと思います。
運用で言えば、具体的には、弊社では3月、6月、9月、12月と四半期ごとに顧客の運用状況についてレビューをしているのですが、その今年2019年9月末のレビューで、昨年の2018年9月末から1年間でそれほど資産が成長していないことに苛立ちを覚える顧客が少なからずいるというのが現実です。「格言八策」。
弊社では、基本的には株式を長期投資でロング(買い持ち)してもらうのをベースに話をしています。
ここでいうところの長期とは5年~10年程度の期間で、もちろん半年~1年などという期間は短期の部類に入ります。
株式の長期チャートを見ていただければわかるのですが、如何に順調そうな長期ブル相場でも株価が半年~2年程度冴えないということはよくあります。
米国株を例にして2008年金融危機からの10年以上続くブル相場のチャートを見てみましたが、
2011年~2012年半ば
2015年~2016年半ば
2018年~2019年半ば
など1年半ほど株価が上がらない状況が3回もありました。
ここで、短期的視点しか持てない投資家は、1年半の膠着した状況が辛抱できずにポジションを手放してしまって、その後に訪れる上昇相場を取り切ることができずに、結果として株式投資の成果を享受することができません。
10年の間で1年半が3回あるわけですので、約4年半、極端に言えば半分ぐらいの期間は株価が行ったり来たりで冴えない展開をしているものなのです。
これが2008年以降の、もっとも長期的に上昇相場にある時でそうなのですから、上昇相場でもなければ、もっと辛抱が必要です。
下記の大和総研のレポートによると、
※参考:セイラー教授の近視眼的損失回避論‐大和総研
ノーベル経済学賞受賞者のリチャード・セイラー教授の話によると、こうした行為を防ぐためには、運用評価の頻度を下げることも有効なようです。
弊社の場合にも、4半期に1度評価しているのですが、顧客に対して4半期ごとに運用状況をお伝えするのがはたして顧客の投資行動に寄与するのか?という課題については考えていかなければならないのかもしれません。
『億の近道』(2019年11月7日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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