ギリシャはアテネ五輪で大失敗
大前:その典型とも言えるのが、2004年に開催されたギリシャのアテネオリンピックです。
当地はオリンピック発祥の地ということもあって、ギリシャは国の威信を賭け、当時、五輪史上最大となる1兆2480億円もの巨費が投じられました(Sankei Biz、2015年8月15日)。2001年に発生したアメリカ同時多発テロの影響で、オリンピック開催時の警備費が膨れ上がったことも重なりました。
さらにギリシャの経済を苦しくしたのが、2008年に発生したリーマン・ショックです。
アテネオリンピックの借金を返済するために、ギリシャは国債を乱発し続け、それがギリシャ危機に発展したことは、記憶に新しいところです。
不確定要素「新型肺炎」も出てきたが…
俣野:今の日本と、1964年当時の日本とでは、経済規模も、受け入れ能力もまったく違う、ということですね。
しかしここへきて、新たな不確定要素が出てきました。
大前:はい。中国の武漢市から始まった、新型コロナウイルスのパンデミック(流行)です。
昨年、日本で行われたラグビーワールドカップの経済効果は4300億円と言われ、それまで日本ではあまり馴染みのなかったラグビーという種目でも、あれだけの盛り上がりを見せていました(日経ビジネスWeb版、2019年10月29日)。
ですから本来であれば、東京オリンピックも、かなりの経済効果が見込めたはずです。
しかし、新型コロナウイルスがこれだけ蔓延し、多数の死者を出している状況では、インバウンド関連の数字の下落は、避けられないところでしょう。
実は私は、2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)が流行した際、発生地だった中国広東省に隣接している香港に駐在していました。
SARSも新型コロナウイルスが原因であり、当時の経験から、春頃が感染者のピークになるのではないかと見ています。
SARSは、2002年11月16日に最初の感染例が報告され、2003年7月5日にWHOによって終息宣言が出されました(国立感染研究所HP)。ちなみに、SARSはSARS-CoVという型で、今回の新型コロナウイルス2019nCoVとは別です。