中国が債権国に対して持つ影響力は増す
とりわけ戦略的に重要な国や事業に対しては、手綱を引き締める可能性があり、中国が地政学上の要衝と位置づけるスリランカやラオスの事業に追加融資しているのは、まさにその兆候と言えるでしょう。
ケニアでは中国の融資で整備されたモンバサ港が債務不履行に陥り接収されるとの懸念もくすぶっています。
まさに、牙をむく「債務のワナ」です。中国の借金外交と呼ばれるものが牙をむき始めているのです。
20カ国・地域(G20)は4月の財務相・中央銀行総裁会議での新興国への債務猶予提案に対して中国も同調したものの「案件次第」との見方が強いようす。
「集団的な債務救済には加わるだろうが、債務を免除する可能性は低い…」、多くの専門家が指摘するところです。
中国は2000〜2017年にアフリカ諸国に、「一帯一路」による巨額のインフラ開発が背景に1460億ドルを貸し付けました。
「中国は利払いを求め続け、貧困国に債務返済か中国製品の輸入かの選択を迫るだろう…」と言うのが専門家の分析です。
以前から言われていたことですが、中国の支援には、債務国を借金漬けにする「債務のワナ」の批判がつきまといます。
コロナ危機発生後も中国に頼る新興国
ただ、コロナ危機の発生後も、中国への債務を膨らませている国は少なくありません。
深みにはまるのがスリランカで、2017年、中国の援助で建設したハンバントタ港の債務返済に行き詰まり、1999年の長きにわたる港の運営権を中国企業に譲り渡した事件は「債務のワナ」の典型例として批判されました。
ところが5月下旬、今度はそのハンバントタ湾と同国中心部の工業団地とを結ぶ高速道路を整備するため中国輸出入銀行からさらに約10億ドルを借り入れたのです。
ラオスでもコロナ危機下にもかかわらず、中国へと延びる鉄道と高速道路の工事が続いています。
このプロジェクトに向けて借りた資金の返済が絶望的になっているにもかかわらず、工事は続けられています。
プロジェクトを糸口に、中国がラオスへの影響を一段と強めるのは必至とみられています。
コロナ危機下で中国が債権国としての立場を強め、新興国に影響力を及ぼす余地が増しています。それゆえの米欧などで高まる債務減免の要請と言われています。
つまり、中国の影響力をそぐための新興国救済だという側面が見えてきます。