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新興国デフォルト危機に笑う習近平、コロナ禍を利用した「借金外交」で世界を牛耳る=原彰宏

新興国への債務問題は覇権争いの火種

新興国の債務問題は経済・人道面の問題であるとともに、覇権競争の色彩も帯びているとも言えます。

もっとも新興国の債務危機問題は、コロナ問題以前から重要視されていて、国際通貨基金(IMF)と世界銀行が今年2月にまとめた報告書も、低所得国のうちすでに半数で対外債務が返済不能に陥ったか、その危機にあると指摘していました。

低所得国に対して6カ月間、債務の返済を猶予したとは言え、2021年以降の道筋は不明とのことです。

やはり中国の動きが気がかりのようです。

中国は、経済協力開発機構(OECD)メンバー国を中心につくる「パリクラブ(主要債権国会議)」に加盟していないこともあり、どんな債務をいかなる形で救済するか不透明なのです。

中国がとりあえずG20の合意に名を連ねたことを各国は歓迎したものの、額面通りに受け取れないところがあるのでしょう。

「パリクラブ」とは、1956年のアルゼンチンの延滞対外債務の繰延を話し合うため、債権国がパリに集まったのが始まりで、IMF・世界銀行のような国際機関ではなく、各債権国の代表者による友好的、かつ、ゆるやかな集まりです。

国際収支の悪化等で累積債務問題に直面したアフリカ、中南米諸国を中心にリスケ(債務の履行が行えるようにその返済条件を変更して、将来に繰り延べること)の要請が頻繁に行われ、1980年代に入ると、数多くの債務国に対してリスケが行われました。

この頃に、現在のパリクラブと呼ばれる運営形態が確立されました。

中国は新興国を狙った高利貸し?

基本的に中国は、一帯一路の関連プロジェクトで貸し付けた債務の救済に応じるつもりがないのでしょう。

実際に、中国商務省傘下のシンクタンク国際貿易経済合作研究院(CAITEC)の幹部は、共産党系の英字紙グローバル・タイムズに寄稿し、国外のインフラ開発などに提供した優遇ローンについて「債務救済の対象外だ」と述べ波紋を呼んだと報じられています。

中国開発銀行などが一帯一路の初年度にあたる2013年以降に融資した関連プロジェクトは67カ国で1,800案件、金額で1,350億ドルに達するとされていて、すべて救済の対象外になるということです。

しかも、これら融資の金利は世界銀行などに比べてはるかに高いそうです。年6%も珍しくないそうで、しかも返済までの期間は短く、多くの融資には天然資源や対象事業の収入、国有資産といった担保が設定されているとのことです。

中国の融資の多くが国営企業や特別目的会社を通じて提供され、その内訳も明らかになっていないため、IMF、世界銀行や国際決済銀行(BIS)の報告制度から漏れた融資も多くあるとされています。

世界銀行が対象としていない30カ国にも融資しており、特にデフォルト(債務不履行)の危険がある国々への新規の貸し出しは、半分近くを中国が占めているそうです。

Next: これは裏を返せば中国が大きなリスクを抱えていることも意味することでも――

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