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日本人は本当に生産性が低かった。私たちの年収が世界最速で下がるワケ=吉田繁治

経営陣がやるべき3つの仕事

人的生産性を高める投資と仕組み作りは、経営の本質的な成果とすべきものです。

経営者の仕事は、人的生産性が高くなる仕組みを作り、社員には、世間の30%増しの賃金を払って、利益を出すことです。このためには、業界平均の人的生産性の2倍でなければならなりません。

経営の仕事は3つです。

(1)現在の事業の、目標とする成果(利益)を上げる
(2)現在の事業のビジョンを示し、新事業の構想も固める
(3)社員の生産性を上げる仕組みと制度を作り、社員の賃金は、同じ業界の平均の30%増しとすることを続ける

1990年の資産バブル崩壊(地価と株価)のあと、資産の下落で借入金が過剰になった企業は、90年代からの30年、設備投資と情報化投資を減らし、負債を減らすためキャッシュフローの利益確保に走りました。

1990年代から、設備投資を、設備と機械の減価償却費以下に減らした企業は、日本経済の成長のエンジンではなくなったのです。

生産性が高くなったという「幻覚」

将来のGDP = 所得 = 人的生産性 × 8時間換算労働人口 です。

人口減の日本では、欧州のように移民を大量導入しない限り、労働人口は増えません。人的生産性の上昇しか、GDPを増やす方法はないのです。

ところが、日本経済の人的生産性の上昇は、年率0.5%~1%ととても低くなっています。

アベノミスクでは、政府系金融機関による株買いが企図され、株式市場では30%は高い「官製相場」が作られています。政府系金融機関とは、年金運用のGPIF(総資金量160兆円)、郵貯(同200兆円)、かんぽ生命(同80兆円)、そして資金量が無限の日銀です。最初に郵貯とGPIFが株を買い、かんぽ生命が続き、4番バッターが日銀です。

日銀は、2014年以来、30兆円の株ETFを買っています。コロナショックのあとは、1年12兆円(1回が約2,000億円 × 60回(ほぼ毎週)です。

政府系金融機関が「買うだけで売らない」ため、日本株は30%は底上げされているでしょう。日経平均株価2万2,8437円(20年8月12日)のうち30%は、6,800円に相当します。

東日本大震災を受けた民主党政権では、8,500円を割っていた日経平均(12年6月)は、安倍政権の(1)量的緩和と(2)政府系金融による株買いを2つの主因として、以下のように2.3倍に上がっています。平均年率11%での上昇でした。

2013年6月:1万3,200円
2014年6月:1万4,900円
2015年6月:2万0,500円
2016年6月:1万7,000円
2017年6月:1万9,800円
2018年6月:2万2,100円
2019年6月:2万1,000円
2020年6月:2万2,200円

つまり、金融的な原因で株価が上がったことが、日本の実体経済が好調になり(失業率は減って)、生産性も高くなっているという幻覚を振りまいてきたのです。

この幻覚は、ドル建て生産性と給与を見ると、覚めるのです。

Next: 日本人の給料は、世界でもっとも激しく下落している

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