日本にも九州地方を中心に甚大な被害をもたらした台風9号・10号で、韓国の原子力発電所は合計6基が停止した。その原因を調べると、天災だけが原因とも言い切れない。(『2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)』)
※本記事は、『2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)』2020年9月13日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
台風が運んだ「塩分」で原発緊急停止
今回は台風9号・10号の影響で停止した韓国の原子力発電所を特集したい。
停止した原発の数は、なんと6基。緊急停止した理由についても当初は報道されていなかったのだが、数日後に停止の原因とされたのは「台風が運んできた塩分」だという。
信じられないかもしれないが、韓国の原発は台風で停止するのだ。
しかも、塩分で停止するというのは、通常はあり得ない。なぜなら、この原発は海辺に立地する。つまり、防水対策をしていないはずがないのだ。
しかし、現実には台風が運んできた塩分によって停止した。問題点をくわしく見ていこう。
「世界最高レベルの安全性」はどこへ?
9月3日、台風9号「メイサーク」の影響で、釜山機張郡(プサン・キジャンぐん)の古里(コリ)原子力発電所3号機と4号機が稼動を停止した。また同日の台風で、新古里1号機・2号機と合わせて、計4基の原子炉が順次停止した。
さらに7日午前には台風10号「ハイシェン」の影響により、月城(ウォルソン)2号機・3号機が相次いで停止した。これで合計6基の原発が停止したことになる。
そして、当時は原因不明とされていたのだが、韓国電力公社の原子力・水力発電子会社「韓国水力原子力(KHNP)」の独自調査の結果が出た。それによると、強風で飛ばされてきた塩分による内部の電力設備の故障のためだったという。
そして調査では、海辺に位置する原発では十分に予想して備えておくべき問題であるとして、原発の安全性に対する懸念を増幅させたと指摘している。これは、当然の指摘といえる。
韓国は2010年、アラブ首長国連邦と韓国初の原子炉輸出契約(APR-1400を4基)を結んでいる。その際、アラブ首長国連邦の電力会社社長は「KEPCO(韓国電力公社)チームの世界最高レベルの安全性と、我が国の目標を果たす能力に感心した」と述べていた。
しかし、台風で停止するような原発に、世界最高レベルの安全性などあろうはずがないだろう。
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