1. 脱税や資金洗浄などの犯罪行為が明るみに出る可能性
まず、タックス・ヘイブンに移した資金が、しばしば脱税やマネー・ロンダリング(資金洗浄)、麻薬取引などの犯罪とかかわることがあり、また経済制裁などに対する抜け道として使われるケースがあります。
今回流出した文書は、これら犯罪に使われる隠し財産の「証拠」となり得るものです。
最近、スイスの銀行がその匿名性や秘密主義から、脱税や資産隠しに使われているとして、米国から情報開示を求められた経緯がありますが、本件もこれに通じます。
犯罪まで行かなくとも、所得格差問題や不公正の問題も指摘されます。1%の富裕層が税逃れをするために、99%の庶民に税負担がかかることも問題視されます。主要国では財政危機が広がる分、脱税を許さない流れになっているのは事実です。
本件では、日本企業の名前も出始めました。その点、日本ではすでに昨年から、日本に居住しながら海外に隠し資産をもつ富裕層の租税回避行動を監視するようになりました。このため、夏に選挙を控えていることもあって、政府は表立って「パナマ文書」へ対応することには慎重になっています。
2. 為政者の「資産隠し」に対し道義的責任が追求される可能性
もう一つの側面は、日頃脱税や不正の取り締まりに積極的な為政者が自ら、あるいはその親族が、これらタックス・ヘイブン地域で資産運用や資産隠しをしていることに対し、道義的な責任や矛盾を問われることです。
例えば、イギリスのキャメロン首相は就任後、脱税や不正の取り締まりに注力してきましたが、その亡父がここで資産運用していたことが指摘されました。
そしてキャメロン首相は、自らその投資ファンドを首相就任直前まで保有していたことを認めています。その道義的な問題を問われ、首相は苦しい立場に立たされています。
同様の問題は、中国の習近平国家主席にも向けられています。これまで共産党幹部も含めて、徹底的に不正をあばき、処罰してきた本人の家族が、これら地域に資産を移していたことが指摘されました。
中国では習主席以外でも、党の序列第5位、並びに第7位の幹部の名前も挙がっています。「ハエもトラも不正は許さない」と厳しく規律を求めてきた張本人が、いくら家族とはいえ租税回避地を利用していたとあっては、国民に示しがつかなくなります。
もっとも、中国では国営メディアが一切報道せず、ネットのサイトもブロックかがかかっています。