安倍政権の継承、どこまで?
菅政権は安倍政権を継承すると言っていますが、もともとは安倍総理が石破元幹事長だけには政権を渡したくないと言い、岸田氏も特別給付金のとりまとめでリーダーシップが取れず、菅氏にお鉢が回ってきた面があります。安倍政権を裏で支えてきたとはいえ、安倍前総理自身が「桜を見る会」などで身辺を捜査され、影響力が落ちています。
しかもこの件に関する報道各社の報道ぶりから見ると、菅政権はかつてのような強い力で情報、報道管制をとっていないように見えます。菅政権は安倍前総理からの自立を企てているようにも見えます。
そして外交面では安倍総理が親しくしてきた米国のトランプ大統領、ロシアのプーチン大統領ともに、立場が弱くなっています。それだけ菅総理の自由度は高まっていると言えますが、逆に言えば、安倍総理が使ってきたトランプ、プーチン・ルートがそのままでは使えないことにもなります。
日本の基本戦略が見えない
ところが、自由度が高まったとはいえ、肝心な菅外交の基本姿勢、戦略が見えてきません。
日本経済については遅れているデジタル化を進め、行革を推進し、2050年までに脱炭素を打ち出しましたが、日本経済をどういう方向に持っていきたいのか、全体像が見えません。
安倍総理がこだわった憲法改正にもあまり意欲が見えません。
外交面では身近な問題として、中国、北朝鮮への姿勢がはっきりしません。中国は米国が大統領選以来混乱しているのをよいことに、東シナ海の尖閣周辺や南シナ海で活動を活発化しています。尖閣では日本漁船を排除し、領海侵犯を繰り返しています。また日本海の大和堆は、日本のEEZ内ですが、北朝鮮の漁船のみならず、最近では中国漁船が大挙してここで密漁しています。
ところが、24日に来日した中国の王毅外相に対して日本は、尖閣周辺での中国公船の活動は極めて深刻と伝えたのに対し、王毅外相はビジネス人の往来を11月中に認めさせたうえで、テレビ報道とは別に尖閣諸島(中国側は魚釣島)をめぐる中国の権利を守ると述べ、日本の要請には耳を傾けなかったことがわかりました。
米国に頼ってきた対中国外交も、米国が動けないと見ると、中国は好き放題動き、そのうち「実効支配」を言い出しかねません。中国やロシアは日本漁船が領海侵犯の疑いがあるというだけで拿捕してきますが、日本は警告を発するだけで、甘く見られています。またもし米国が動いた場合に、日本は自衛隊をどう動かすのか、基本姿勢を決めておかねばなりません。