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【8月米雇用統計】リスクオンモードの市場だが、先行指標ISMの弱い数字に警戒を=ゆきママ

今週はリスクオフ(回避)の動きでスタートしましたが、一転してリスクオン(選好)モードに包まれています。そんな中で発表される今夜の雇用統計は重要な意味を持つことでしょう。

それでは、いつものように今の相場状況について確認しつつ、今夜の雇用統計の展望、トレード戦略を考えていきましょう。(『ゆきママのブログでは書けないFXレポート(無料板)』『お値段以上!?ゆきママの「週刊為替予測レポート」(有料板)』FXトレーダー/ブロガー・ゆきママ)

想定レンジは1ドル=105.80~107.80円、今夜のトレード戦略は?

本質的に中身はないがリスクオンの流れ

ドル円は8月2日以来、約1ヵ月ぶりの水準に上昇するなど、全体的にリスクオン気味の流れとなっています。

背景は大きく分けて2つあり、1つは米中通商交渉への進展期待、もう1つはブレグジット(英国のEU離脱)をめぐる合意なき離脱回避期待があります。

米中通商交渉については、5日に9月中旬に事務方レベルでの交渉、10月上旬にワシントンで閣僚級会合が行われると発表されたことで、期待感先行という流れになっています。しかしながら、これまでも繰り返している通り、本質的な交渉の進展というのは望み薄でしょう。

昨年から何度も何度も合意は間近である、交渉は上手くいっていると米中双方が再三発言してきたにも関わらず、制裁関税は互いにエスカレートし続けています。もはや事務レベルは当然として、閣僚級の交渉すら意味をなさないことが明らかとなっています。

この米中の大きな隔たりを解消するには、トランプ大統領と習近平総書記のトップ同士の合意が不可欠ですから、この交渉再開のニュースバリューは本質的には非常に小さいと考えています。

ただ、市場は再び期待感先行で動いていますから、否定されない限りは株価も含めてドル円を中心にクロス円も底堅い値動きを続ける可能性があります。

それから、もう1つのブレグジットについては、離脱期限の延期をEUに要請する、いわゆる合意なき離脱法案が成立し、合意なき離脱の可能性が下がったということを好感してポンド買い戻しからのリスクオン相場となっています。

また、ボリス英大統領が画策する早期の解散総選挙も否定されそうなことから、目先の合意なき離脱の可能性は確かに下がっているでしょう。

とはいえ、仮に英国が離脱期限の延長をEUに求めたとして、英国を除く27ヵ国が全会一致で認める必要があります。

前回4月に離脱期限が延期となった際には、マクロン仏大統領が強硬に反対したことから、1年という延期期間が間をとって半年になったという経緯があります。

結局のところ、議会が首相・政権の行動を縛り、議会がイニシアチブを握るも結局は決めきれないという流れはメイ首相の頃から変わっておらず、今回もその可能性が高いでしょう。

これを踏まえると、すんなり離脱期限の延長が認められるとも考えにくく、本質的に好材料ではないでしょう。

このように現状としては、中身がないながらもヘッドラインに踊っている状況。いつかハシゴを外される可能性を考えつつ、短期的には乗っかっていくしかないのかもしれません。

ISMの雇用指数の低下を気にせず市場は期待感先行

それでは、先行指標の数字を見ていきましょう。先月に続いて、ISM(全米供給管理協会)の発表する雇用指数の数字は弱い状況が続いています。

図1:先行指標の結果(青は改善・赤は悪化、数値はいずれも速報値)

図1:先行指標の結果(青は改善・赤は悪化、数値はいずれも速報値)

民間の雇用報告であるADP雇用報告が大きく伸びたことで覆い隠されていますが、ISMの示唆する雇用活動は製造業、非製造業ともに停滞感が漂っています。

特に製造業部門に関しては、過去3年間でもっとも弱い数字となっており、賃金への影響も懸念されます(一般にサービス業よりも製造業の方が賃金が高いとされている)。やはり世界的な景気の停滞、先行き不透明感は米中の貿易戦争の加熱によって、さらに増していますからね。企業が雇用を絞っていく理由には十分です。

一方で、外食産業は順調に伸びており、製造業の雇用を補っているという指摘もあり、悩ましいところではあります。

それでも、ドル円のレートも含めて全体的に見れば期待感が高すぎるように思います。非農業部門雇用者数の事前予想値は+15.8万人という、まずまず妥当な数字ですが、市場のハードルはもう少し高いでしょう。強くて当然、弱ければネガティブサプライズといった見方で今夜は見ておきたいところでしょう。

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