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バイデン政権誕生前後に株価調整?シーゲル博士、ガンドラック氏の見解は=江守哲

米国株の投資戦略と考え方

米国株は15日の市場で下落したが、それでもまだ高値圏である。ただし、この日はFANG指数、ダウ輸送株指数、ラッセル2000、SOXが下げており、これまでのけん引役が不安定になっている。これがピークアウトの兆候かはまだわからないが、この動きが続くといよいよ調整となる。その可能性は徐々に高まっているように見える。

18日はキング牧師生誕記念日で休みだが、20日のバイデン次期米大統領の就任式もある。これを境に波乱が起きるのか、今週は相応の注意が必要である。

投機筋は先物市場でナスダック100ミニ先物を売り、S&P500ミニ先物を買い戻し、VIX先物を売っている。VIX先物のネットショートは10万枚を超えてきた。楽観度合いが強まっているといえる。これも目先の調整のサインになる。これらの動きを総合すると、短期的な調整のタイミングが近づいているように見える。

バンク・オブ・アメリカ(BOFA)が15日に公表した週次ファンドフローデータによると、投資家は13日までの1週間に金融株とエネルギー株に資金を振り向けたようである。バイデン米次期大統領による1兆9000億ドルの経済対策公表に先んじてポジションを調整したようだが、まさに昨年から私が指摘していたこのふたつのセクターローテーションがみられている。まさにリターン・リバーサルの動きである。

株式ファンドには268億ドルの資金流入に、エネルギー株には過去2番目に大きい36億ドルが流入したという。また、金融株への流入額は21億ドルに達したようである。インフレ期待が高まる中、インフレ指数連動債(TIPS)に18億ドルの資金が流入し、過去3番目の大きさだった。

BOFAによると、市場ではインフレ期待が高まっており、今年はインフレ資産がデフレ資産をアウトパフォーマンスしている。アウトパフォーマンスの程度は2006年以降で最大という。また、新興国株式には70億ドルが流入。過去6番目の高水準だった。税制を巡る思惑から、地方債には記録的な高水準となる25億ドルが流入した。BOFAのブルベア指標は7.1で変わらず。

BOFAによると、過去12週間で少なくとも3200万回分のワクチンが投与された。世界のワクチン配布ペースは同行の予測を大幅に下回っている。ただ同行の基本シナリオでは依然として、感染拡大よりもワクチンの普及を、景気後退よりも経済活動の再開を重視。財政刺激策の拡大、株式へのローテーションを予想している。

中期的には、このようなセクターローテーションは機能する。今年はエネルギーETFと金融関連ETFを買うのは非常に理にかなっていると考えている。また、これから調整場面が来れば、待ちに待った押し目買いのタイミングになる。これを待っていたのである。

今年の鬼門は5月・6月

さて、繰り返すように、今年はやはり鬼門は5月から6月になりそうである。これは、WTI原油の動きから見た米CPIの動きがきっかけになると考えている。米CPIはおそらく2.5%から3.5%に上昇すると考えている。そうなると、政策金利と市場金利の差が拡大し、FRBに圧力がかかることになる。それにFRBは耐えられるのか、非常に疑問が残る。また、新興国株をS&P500で割ったレシオを見ると、米10年債利回りに先行して上がっている。

このような傾向をみると、米金利は上昇せざるを得ないようである。結局、今年の5月から6月に金利が上昇し、市場がそれを嫌気する形で売りが出るのではないかと考えている。その下げが大きければ、その後の株価上昇は限定的になる可能性がある。

それでも、年初1月と比較すれば、結果的に上昇して今年は終わるのではないかと楽観している。それが過去のパターンである。S&P500のパターンを見ると、今年の騰落率は100%の確率で上昇と判定されている。これは心強いデータである。

さて、今年は中小型株やエネルギー・金融株のリバウンドが期待できると昨年から指摘してきたが、年初来からの動きを見ると、やはりそのような動きが顕著である。エネルギーETFはすでに10%もの上昇となっており、金融も強い。このように、前年に売り込まれたセクターは翌年にリバランスで買い戻される傾向がある。

一方、金利の上昇は今後は市場にどのような影響を与えるかを考えておく必要がある。本来は、景気回復を織り込んで株価が先に上昇し、その後景気が実際に堅調さを示すようになり、それに合わせて金利が上昇していくのがセオリーである。しかし、いまはコロナ禍で金融政策は緩和的であり、これが株価を支えるいびつな構図である。パウエルFRB議長がまだ金利を引き上げる時期ではないというのも理解できる。

しかし、いまは将来の景気回復を織り込む形で株価が上昇し、金利も上がってきている。しかし、雇用は弱い。FRBにとっては悩ましい状況になりつつある。インフレ率が上昇すれな、低金利政策を維持できるのか、疑問が残る。原油価格と米CPIの相関関係は0.77とかなり高いが、私は米CPIの前年同月比の上昇率は、4月から6月にかけて2.5%から3%に達する可能性があるとみている。昨年12月が1.4%であり、ここから一気に1%以上も上昇すれば、市場には相応のショックもあろう。

この点については、先程も取り上げたダブルライン・キャピタルの最高経営責任者(CEO)で著名投資家のジェフリー・ガンドラック氏も同じ意見のようである。ガンドラックは「これまでは信じられないくらい安定的なインフレの時代だった。そして、本当に大きな疑問は、これが続くかである。私は間違いなく答はNOだと思う」としている。ガンドラック氏は、5-6月に発表されるCPIが3%程度まで上昇すると予想している。私と同じ見立てである。

ガンドラック氏は「現在は債務過多のために、おそらくデフレになっている。将来は莫大な貨幣増発のためにインフレになる」としている。多くの人はコロナ後のインフレを予想しているように見えるが、米国でも日本のようにディスインフレ傾向が続くとの見方をする市場関係者も皆無ではない。しかし、ガンドラック氏はインフレを予想しているようである。

ガンドラック氏は「ディスインフレ傾向が続くとは考えていない。この傾向は、これまでの過去25年ほど経験してきた時代に続いて起こるものではない。そのうえで、以新興国株(特にアジア)に強気で、現金はデフレへの備えで保有する、30年債など米長期国債もデフレへの備えで保有するとしている。さらに、実物資産の中で不動産、ビットコイン、金などで好きなものを保有しておくとよいとしている。

現金と長期国債がデフレ・リスクのヘッジとなり、新興国株と実物資産がインフレ・リスクのヘッジになるという考えである。しかし、ガンドラック氏の推奨ポートフォリオに米国株は入っていない。それは、米国株が割高であると判断しているからである。ガンドラック氏は、ロバート・シラー教授の「超過CAPE利回り」を米国株に応用しているようである。超過CAPE利回りとは、CAPEベースの益回りの10年債実質利回りに対するイールド・スプレッドを指す。

この指標を歴史的水準と現状の水準を比べると、現状の米国株はまだ割安に見えるという。ただし、注意すべきは、債券との比較においては割高に見えないことである。ガンドラック氏は「債券王」であり、債券から見た株式の価値を判断する傾向がある。そのため、歴史的水準と比べて株式が割高との判断になるようである。しかし、その債券もまた歴史的水準とインフレに対してきわめて割高となっていると判断しているようである。これは誰が見てもわかる事実であろう。

このように考えると、シーゲル教授が指摘するように、やはり債券は「最悪の投資先」となる。保有額はできるだけ減らしたほうがよい。そのうえで、将来のインフレに備えたポートフォリオに組み替えるべきであろう。株式と金はその中でも重要なポジションになる。原油ももしかすると上がるかもしれない。債券は駄目である。

また、通貨価値の下落を想定すれば、ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)も対象としてもよいのかもしれない。私も少しずつ買い始めているところである。

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