通信環境は整うか?基地局確保が課題
楽天は携帯事業者として、ユーザーに豊富なコンテンツを提供できる点で優位であることは、ここまで述べてきました。
しかし、他社に比べて劣っている点があります。それは、携帯事業者として最も大切な「通信環境・基地局の整備」です。
三木谷氏は「4位にとどまるつもりはない」と強気な姿勢を示していることからも、何としてもインフラ基盤の構築を急ぐ必要があります。
決算発表では、ユーザー拡大に合わせて、基地局整備の計画にも変更を加えています。
1月末時点で人口カバー率は74.9%です。今夏には当初計画では2026年3月末に予定していた人口カバー率96%を5年前倒しで達成する見込みとなっています。
96%達成時の当初計画での基地局数は2万7,397局でしたが、今回公表された新計画では4万4,000局まで増やす予定です。
楽天は上位3社に食い込むか
あえて、ここでは「携帯会社のトップ」ではなく「各グループのトップ」が今、最も注力していることに言及しておきたいと思います。携帯事業はグループとのシナジーを見出す総力戦だからです。
NTTドコモは、NTTの澤田氏のもとで完全子会社化となり、今年夏までにNTTコミュニケーションズなどもドコモの傘下に置かれます。「ahamo(アハモ)」で先手を打ったドコモは、1月上旬で事前予約者数が55万人に達しています。果たして、狙いであった若い世代を取り込むことができたのでしょうか? NTTはドコモを完全子会社化することで、利益を内包し、6Gといった次のステージで世界の覇権を狙う「大帝国」の地盤固めをしています。
ソフトバンクは、ソフトバンクグループの孫氏のもと、傘下となったLINEの強みを活かした携帯事業の方向性が見られます。ただし、孫社長は携帯料金の値上げの圧力に対して、もはや、携帯事業にすでに面白みを感じていないとの発言も見受けられます。最大の関心事は「AI群戦略」によるビジョンファンドでの投資利益を上げることには間違いないでしょう。
KDDIは、高橋氏のもと、携帯事業に力を入れながらも、非通信事業である、ライフデザイン領域にも力を入れており、金融・決済の分野が成長しています。金融・決済取扱高は6.5兆円、au PAYカードの会員数も610万に成長しています。こちらも、銀行・証券など携帯事業と新和性が高いと言えるでしょう。