バイデン政権は「戦争もいとわない」
トランプ前大統領も、民間人でもあり、政治家ではなかったことがイランには幸いした。トランプ大統領も「戦争はしたくない」としていた。政治家ではないこともあり、真の意味で神経は図太くなかったのである。その結果が、前述の発言につながっているのである。
しかし、米政権が、バイデン政権に代わったことは、イラン側の政策の大きな影響を与えたといえる。つまり、米国サイドが「戦争もいとわない」強硬派が政権に就いたからである。
オバマ政権時に大量の軍事費を使って世界を牛耳ってきたのがオバマ氏であり、当時副大統領だったバイデン氏である。
その意味では、バイデン氏はいつでも核爆弾のボタンを押すことができるだろう。このことをイランサイドは十分に理解していると思われる。
だからこそ、イランは焦って揺さぶりをかけているのである。
核合意は形骸化
さて、ロイター通信などによると、IAEAは加盟国向けの報告書で、イランが製造した濃縮ウランの一部の濃縮度が20%に達したことを確認したと明らかにした。イランは核開発強化を定めた国内法に基づき、20%の濃縮ウラン製造に着手し、IAEAにも方針を通告していたが、実際に製造が確認されたのは初めてである。
2015年に締結された核合意は、濃縮度の上限を3.67%と定めていた。これにより、核合意はもはや形骸化したといえる。
IAEAによると、今月16日時点で20%の濃縮ウランの製造量は17.6キロだった。また、濃縮ウラン全体の貯蔵量は計2967.8キロと、核合意の上限の202.8キロの約15倍に達した。IAEAは、イラン国内の未申告の施設に核物質が存在していた可能性があるとして、「深刻な懸念」を表明している。
このようにみていくと、IAEAの存在自体ももはや機能不全に陥っているといえる。これは非常に危険な状況である。
いまのところ、イランは自制しているように見える。しかし、実際に何を考えているかはわからない。表面上は抜き打ち査察受け入れを停止し、強硬姿勢を崩していないが、これがポーズだけである可能性もある。
しかし、バイデン政権への揺さぶりに止まらなければ、これは一大事につながるリスクがある。