日銀ETF買い「TOPIX型のみ」を歓迎する声
ただし、TOPIX型のみを買うという点については歓迎する声が多いといえる。
浮動株比率が少ないファーストリテが上昇すれば日経平均も連れ高となるなど、市場のゆがみが指摘されてきた。そのゆがみが是正されるという面ではポジティブである。また、短期筋による日経先物の投機的な売買も減るとの指摘もある。
たしかに、これまでファーストリテやソフトバンクの株価を動かし、日経平均先物を動かすような取引が横行していた。一部の指数寄与度が高い銘柄に市場が翻弄される場面が多かったことを踏まえれば、適正な購入法に変更したと言える。
日銀は株式市場をよく観察し、相場の本質を理解していることを示したとみることができるだろう。きわめて正しい判断である。
物色の流れはバリュー株主導へ
一方、これをきっかけにして、物色の流れはバリュー株主導がより鮮明になるとの見方が出ている。
直近の相場では、米長期金利の上昇を背景にしたナスダック指数のさえない動きを受け、値がさグロース株の下げが目立つ一方、経済正常化による収益回復期待からバリュー株の修正高が進んでいる。日銀のETF購入がTOPIX型に絞られることで心理的にバリュー株の優位性が高まる可能性が高い。
日銀が、現在のグロース売り、バリュー買いの相場を容認するような格好となっている。年度末を控え、配当権利取りが活発化するため、目先はTOPIX優勢の相場展開が続くことになりそうである。
日経平均株価に強烈な売り圧力か
これまで、日経平均株価は日銀によるETF購入でかさ上げされてきたとの指摘がある。2,000円ほど割高になっているとの見方もある。15倍から17倍程度が中心だったPERが今や23倍である。現在のPERを基準に17倍のPERを当てはめると、日経平均株価の理論値は2万2,000円にも届かない。PERを20倍に引き上げても、2万5,500円程度である。
このように考えると、日銀が日経平均連動型のETFを買わないことも考慮すれば、今後は日経平均株価に強烈な売り圧力が出る可能性がある。
したがって、投資家サイドも、今後の投資対象は日経平均株価ではなく、TOPIXにすべきである。これは短期戦略も長期戦略も同じである。そして、日経平均株価はそれらのヘッジのためのツールになるだろう。
つまり、TOPIXを買えば、日経平均でショートし、ヘッジするなどの方法である。そのうえで、日経平均株価の適正値を市場がどのあたりで考えているのかを探ることになろう。