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東芝「身売り危機」は終わらない。社長交代劇で見えた根本的な欠陥、稼ぎ頭なき延命企業に未来はあるか?=馬渕磨理子

東芝の持つ特許は魅力的だが…

東芝は、その他、技術特許を数多く保有しています。半導体関連技術、パワー半導体事業、レジのPOSシステムも複合機、自動車・モビリティ関連技術など魅力的な技術が多数挙げられます。

しかし、東芝はここまで、医療、半導体と付加価値の高い事業分野から切り売りしていきました。その結果、鉄道インフラ、発電、エレベーター、レジシステムなど多彩な分野を幅広く手掛けていますが、成長分野の核になる事業がない状態です。

技術を切り売りすることで時間稼ぎをしている間に、稼げる核となる事業を育てることに注力しなければ、何も残らない企業になりかねない。そのような、状況が刻々と差し迫っているのです。

「会社」は誰のものなのか

東芝がなぜ、このような状況に陥っているのかは、「会社は誰のものなのか」という問いを立てることで本質的な問題と向き合うことになります。

この問いは、非常に難しいテーマではあります。資本主義社会の中では、今のところ「会社は株主のもの」です。

しかし、東芝の今回の経緯を見れば、「株主資本主義」が果たして、正しいのかといった疑問を持つ人も多いでしょう。真の意味で企業の成長を応援し、支えるマインドを持つ株主の姿が求められます。

ファンドにそのような人間性の側面は必要ないとの意見があるかもしれませんが、そうでしょうか。

金融の本来の姿は、企業の成長を資本という力で、側で支えることです。成熟した資本主義社会において、今一度、金融も原点回帰が求められているように感じます。

東芝を取り巻く「物言う株主」は“人間性”が高いというよりは、“金融性”が高いファンドが集まってきているといえます。言い換えれば、人間的要素の低いファンドが集まってきていること自体が、それもまた、その企業の「価値」を皮肉にも表しているのです。

昨今では、株主だけを重視するのではなく、従業員や環境、地域社会などを同時に重んじる「ステークホルダー資本主義」への移行がテーマとなっています。

東芝の件は、「株主資本主義」の限界が露呈している1つの事例だと言えるでしょう。人間性の高い投資家が東芝を支えている。そんな企業の姿に生まれ変わることを期待します。

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image by:Cineberg / Shutterstock.com
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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2021年5月1日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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