神社本庁「全面敗訴」の影響
そして、先程の重要人物2名のことですが、神社本庁総長の田中恆清氏は、日本会議副会長も務めています。
打田文博氏が会長を務める神道政治連盟(神政連)は、「神道精神を国政の基礎に」を合言葉に、神社界を母体として1969年に設立された政治団体で、本部は神社本庁内にあり、役職員には神社本庁の評議員らが名を連ねていることから見ても、神社本庁や神社庁と神政連は“一心同体”の組織と言えそうです。
いまの与党自民党の政策に、彼ら2人がいる2つの政治団体、日本会議と神道政治連盟が大きな影響を及ぼしているのではないかと思われます。
その応援団が「美しい日本の憲法を作る会」でもあるようにも思えます。
神社本庁は全国にある神社の総本山、その組織(ストレートに言って“票田”と“人海戦術要員”)となるのが神道政治連盟という感じでしょうか。
その彼らのお膝元である神社本庁が民事訴訟ではありますが、全面敗訴となったことの重みは、容易に想像できるかと思います。
日本会議と神道政治連盟と政治
菅内閣の閣僚を見渡せば、神道政治連盟の人は16人でトップ。次いで日本会議との関わりがある人が13人います。これを大臣以外の役職や党4役まで広げれば、神道政治連盟に関わっている人は50人、日本会議で38人になっています。
その他の新興宗教の名前を見ると、霊友会、不二阿祖山太神宮、スピリチュアル議連などがあります。当然、創価学会関係者は1人おられます。日本会議・神道政治連盟については、日本会議国会議員懇談会や神道政治連盟国会議員懇談会に所属する人物を含みます。
安倍内閣と比べて菅内閣では、神道政治連盟系が10人増えて、日本会議系は4人増えています。
※参考:統一教会系閣僚9人。安倍政権と変わらぬ菅政権の「新宗教・スピリチュアル・偽科学」関係 – ハーバー・ビジネス・オンライン(2020年11月9日配信)
政治の分野においては、外交・安全保障だけでなく憲法改正に関する姿勢や、さらには家族間の問題・性のあり方・夫婦別姓に対する取り組み姿勢なども、日本会議や神道政治連盟の主張が絡んでいることは否めないと思います。
「選択的夫婦別姓」は実現しない?政治を動かす日本会議
たとえば、いま話題の「選択的夫婦別姓」の議論があります。自民党は選挙を意識して、あたかも選択的夫婦別姓の是非を議論しているかの動きを見せてはいますが、自民党の票田である日本会議と神道政治連盟の立場はどうでしょうか。
日本会議の立場については、以下の記事でくわしく書きました。
その理念には「伝統的家族制度の復活」があり、夫婦別姓には反対の立場で、戦後の「国家から個人へ」の流れには不満があるようです。
自民党の改憲草案は、その24条で「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない」というのがあり、これに日本会議として同調しています。
神道政治連盟の基本理念は「憲法改正」で、日本各地の神社で「憲法改正」のビラが置いてあったり、のぼりが立ててあったりします。
教育基本法改正(第一次安倍政権時に交付・施行)、安全保障体制の確立、戦没追悼施設建設反対、夫婦別姓・男女共同参画社会推進反対の立場です。
これを見ても、今の自民党政権下において「選択的夫婦別姓」が認められるはずがないと思ってしまうのは、自然の発想だと思います。