食料価格が急上昇し、10年ぶりの高水準となっている。これは常々言われてきた「食料危機」の前兆だろうか?日本も食料不足に陥るのか、価格上昇の背景とともに解説したい。(『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』高島康司)
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10年ぶりの高水準となった世界の食料価格
近い将来に日本で食糧危機が起こる可能性について解説したい。
いま世界の食料価格が急上昇し、10年ぶりの高水準を記録している。代表的なものの対前年度比の上昇幅は以下のようになっている。
・トウモコロコシ:61%
・大豆:60%
・植物油:74%
・小麦:12%
・砂糖:54%
このような食料価格の急騰を見ると、かねてから懸念されていた世界的な食糧危機が始まったのではないかと懸念してしまう。事実、そのような声はネットにあふれている。
いま懸念されているグローバルな食糧危機とは、地球温暖化による環境破壊が臨界点に達し、
1. 異常気象
2. 水源の枯渇
3. 利用可能な農地の縮小
などが原因となり、農業生産が長期的に低減する状況を指している。いわば農業生産の限界点である。
この水準に達してしまうと、増加する人口に食料の供給ができなくなるので、世界各地で集団的な飢餓が発生する。もちろん供給量が絶対的に減少するので、食料価格は高騰する。
これが起こる可能性は何年も前から懸念されてきた。いま起こっている穀物などを中心とした食料価格の急騰は、こうした食糧危機の最初の前兆ではないかと見られているのだ。
果たしてそうだろうか?
マヨネーズも牛丼も値上げへ。それでも食糧危機の前兆とは言えぬワケ
しかし、今回の食料価格の高騰の原因を見ると、これが懸念されてきた食糧危機の前兆ではないことが分かる。その主な原因は次のようなものだ。
<トウモロコシ、大豆、小麦>
これは中国が養豚拡大のため飼料用穀物の購入を増やしているものの、主要な産地である北米や南米が、不安定な天候から収穫が一段と減るとの見方が強まった結果だ。穀物価格の急騰は、これを飼料としている畜産業にも大きく影響し、食肉価格全般を高騰させる原因にもなっている。
<食物油>
また加工食品などに使う植物油の高騰だが、これは消費量が最も多いパーム油が、主産地の東南アジアの生産量が伸び悩んだ結果である。バイオディーゼルなど燃料の需要が膨らむとの期待もあり、植物油がそちらの用途に振り向けられているのだ。
上記のものはすべて加工製品の原材料となるため、これから食料品全般の価格上昇が予想されている。たとえば食品メーカーの「キユーピー」などは、主な原料である食用油の価格が上昇しているとして、主力商品のマヨネーズを7月から最大で10%程度値上げすると発表している。同じような動きは、日本でもこれから多くの食品で続くと思われる。また輸入牛肉の値上げから、牛丼チェーンも値上げせざるを得ない状況だ。
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