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日本でも食糧危機は起こるか?世界の食料価格急騰に3要因、国民が飢える最悪シナリオ=高島康司

日本はまだまだデフレ基調

このような状況が背景となり、インフレが昂進している国もある。たとえばアメリカだ。いまアメリカでは、200兆円を越える大規模な経済対策と、それによる景気の急拡大が合い間って、過去30年でもっとも高水準のインフレが進行している。そうした状況で食料の需要も拡大しているので、価格の上昇も激しくなっている。全米各地で食肉の価格は20%から30%も上昇し、国民の生活を圧迫している。

食肉のみならず、供給力不足による食料品の価格上昇は、程度の差こそあれ、南米、中東、アジア全域で見られる一般的な現象になりつつある。

一方日本では、消費者物価指数はプラス0.1%とまだまだデフレ基調が続いている。インフレとはほど遠い状況だ。日本の2021年1月から3月期の成長率は前期比でマイナス5.1%と低い。プラス18.3%の中国とは、あまりに大きな差だ。消費者物価指数の低い伸びも、この成長率の低さを反映している。

日本ではまた食料インフレのようなことは起こっていないのが現状だろう。

食料価格の高騰は食糧危機の前兆ではなく、需給ギャップの問題

しかし何度も書くが、今回の食糧価格の高騰はいわゆる食糧危機の前兆ではない。

今回の高騰は、食料需要の増大に供給体制の拡大が一時的に追いついていないことが背景にある。環境破壊が臨界点に達し、食糧生産の絶対的な限界点に至ったことが原因ではない。

したがって、ワクチン接種の普及によってパンデミックが落ち着き、農畜産物の供給が拡大すると、比較的に早い時期に価格は落ち着くのではないかと思われる。

もちろんアメリカの熱波のような天候異変などの影響は続き、これによる供給体制の打撃も長期化する可能性は大きい。

しかし、そうだとしても、食料価格の高騰でこれまで注目されていなかった生産地の供給が拡大することで、供給体制が整備されるとの見通しもある。

また中国では、コロナ禍や天候異変の影響で縮小した農業生産を補うため、高度なITによって管理された大規模ハウスを大都市の消費地に多数建設し、供給力を増大させている。このような対応も可能だ。このように、食料の供給体制は環境の変化にフレキシブルに対応できる。

もちろん、それでもトウモコロコシ、大豆、植物油、小麦、砂糖、食肉など原材料の価格は高騰しているので、この夏から日本でも加工食品の価格が一斉に値上げされることはあるだろう。

そうした一斉値上げは食糧危機が始まったのではないかと警戒させるかもしれないが、そうではない。今回は単に食料の需給ギャップから起こっているので、比較的に短い期間に収まるのではないかと思う。

現在は2007年「石油高騰」で起きた食糧危機に似た状況?

このように見ると、現在の食料価格の高騰は、2007年〜2008年に起こった食糧危機と類似したものであることが分かる。

2008年はリーマンショックで頂点に達した金融危機の年だったが、食糧危機の本格的な到来も叫ばれた年であった。トウモロコシを中心とした穀物の価格は高騰し、低開発諸国で大規模な抗議運動や暴動が起こった。

コメは217%、小麦は136%、トウモロコシは125%、大豆は107%も上昇した。穀物を飼料とする食肉価格も急騰した。現在よりも激しい高騰である。

このときは本格的な食糧危機がやってきたとして、日本でも食糧備蓄を勧める声が大きくなった。

しかし、食料の価格高騰は1年ちょっとで収まった。それというのも、価格高騰の基本的な原因が原油価格の高騰にあったからだ。このとき原油価格は、史上最高値の1バーレル、147ドルになった。この価格水準ならば、コストのかかるトウモロコシが原料のバイオエタノール燃料でも十分に採算が取れる。そのため多くのトウモロコシ農家が食料の生産からバイオエタノールの生産へとシフトしたのだ。これは食料としてのトウモロコシの価格の高騰を招いた。

一方、トウモロコシの価格上昇は、穀物全体の値上がりを期待した投機マネーの流入を招き、国際市場で農産物価格が吊り上がった。この結果、価格高騰は穀物全体に拡大した。さらに、当時世界各地の農業地帯を席巻した天候異変による凶作も影響した。

だが2009年になると、アメリカのシェールオイルの産出も始まり、原油価格は急速に下落した。それに伴い、バイオエタノール燃料の生産は採算が取れなくなり、多くのトウモロコシ農家は食料の生産へと回帰し、供給が増大したトウモロコシの価格が下落した。その結果、穀物市場への投機マネーの流入も止り、穀物価格も下がった。このようにして2008年後半には食料価格は元の状態に戻り、食糧危機の懸念はなくなった。

今回の食料価格高騰の背景は、コロナ禍後の早い景気回復による食料需要の増大に、供給体制が追いついていないことにある。それによる需給ギャップが価格高騰の背景だ。2007年〜2008年の危機と同じように、供給体制の整備ができると価格高騰も落ち着くのではないかと思う。さほど長くは続かないだろう。いまのところ怖がる必要はないように思う。

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