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五輪に便乗「神宮外苑再開発」の深層。新国立競技場建設で“高さ制限”緩和、地価上昇で儲かるのは誰か?=原彰宏

新国立競技場建設は神宮外苑地区「高さ制限」の緩和が目的

「国立霞ヶ丘競技場(国立競技場)の建替えを契機として、地区内のスポーツ施設等の建替えを促進し、国内外から多くの人が訪れるスポーツ拠点を創造……」。

これが、東京都が言う「神宮外苑地区再開発の目的」として、具体的には、国立競技場を作り変えることで、神宮外苑地区で「高さ制限」を緩和することになったのです。

そもそも神宮外苑は、明治天皇を祀る沿道として、日本初の風致地区に指定されています。

「風致」とは、都市において水や緑などの自然的な要素に富んだ土地における良好な自然的景観のことであり、それらを維持するために、一定の建築・開発行為を認めつつも、建築物の建設や宅地の造成などに制限を設けています。

要は、神宮外苑一帯は本来、高いビルを建てることができないのです。「15メートル」という高さ制限があるのです。神宮外苑は「東京都風致地区条例」により、規制されているのですね。

かつての日本は、例えば幻に終わった1940年の東京五輪では、明治神宮外苑競技場を改築してメイン会場にするところ、風紀や景観を害するということで、駒沢オリンピック公園へ変更しています。

1958年の国立競技場建設の際にも、景観を守るために、周辺建物に合わせて高さを求めない設計となっていました。

1964年東京五輪の際にも、メイン会場にするために拡張は必要ながらも、極端な高いものにはしなかったのですが、それが2020年大会では、イラク建築家の案通りに、一気に70メールにまで上に伸びていったのです。

「東京五輪」の名のもとに、東京都都市整備局「再開発等促進区」の適用となり、高さや容積の制限に「特例」という言葉がつけられるようになりました。

国土交通省の「再開発等促進区」説明によれば、以下のように書かれています。

土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の増進とを図るため、地区計画において一体的かつ総合的な市街地の再開発又は開発整備を実施すべき区域(再開発等促進区)を定め、地区内の公共施設の整備と併せて、建築物の用途、容積率等の制限を緩和することにより、良好なプロジェクトを誘導する。

この「国立霞ヶ丘競技場(国立競技場)」が建て替えられることで、当初は、ザハ・ハディド氏設計の、高さ75メートルの建物が立つことになっていたので、高さ制限「15メートル」が「80メートル」になったのです。

新競技場の高さは促進区の運用基準を超えていましたが、都は「周辺市街地への影響に支障がない場合、この限りでない」という“ただし書き”によって建設を認めました。

東京都都市整備局ホームページには「再開発促進区を定める地区計画一覧」があり、そこに「東京都決定」として、神宮外苑地区の高さ制限が「80メートル」に変更されたことが載っています。51番目なので、かなりスクロールしないとたどりつけませんが、丁寧に見ていると、昨今の東京都内で“雨後のタケノコ”のように高いビルが建っていく背景がよくわかります。

旧国立競技場を壊すのが早かったですよね。本当に手際が良かったですよね。

「都心最後の一等地」神宮外苑地区再開発が実行されるだけで、たとえ東京五輪ができなくても“十分に潤う”ことになっていたのでしょうね。

スポーツ施設の老朽化問題から、「オフィス・商業施設・住宅開発」へ…。神宮外苑地区には、地上2階、高さ約90メートル、延べ面積約213,000平方メートルの「伊藤忠商事東京本社ビル」がそびえています。三井不動産による「三井ガーデンホテル神宮外苑の杜プレミア(高さ約50メートル、362室)」が開業しています。高さ制限緩和後は、50メートル超のビルは4等建っています。五輪後の建設予定の計画もあるようです。

神宮外苑の杜は、“高層ビルの森”へと変貌を遂げることで、ヒートアイランド抑制に寄与している樹林が、大幅になくなっているのです…。

Next: 神宮外苑地区地価が上がり、地権者は大きな利益を享受する

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