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松屋「牛めし」値上げに悲鳴も、ステルス値上げよりは許せる?給料上がらず生活費アップの“インフレの秋”で国民困窮

牛丼チェーンの松屋が、今月28日から主力商品である「牛めし」を値上げすると報じられたことが、利用者の間で大きな反響を呼んでいる。

これまで税込320円(沖縄は290円)だった牛めし(並)の価格は380円になり、いっぽうで主に関東地方の店舗で提供していた「プレミアム牛めし」は、販売終了となるとのこと。今回の値上げと同時に、牛めしに使われていたタレを改良するとともに、無料で付く味噌汁に使う味噌と出汁も変えるという。

同社によると、プレミアム牛めしを関東以外でも販売してほしいとの声に応えるために、牛めし関連商品を全国で一本化させるという狙いがあるいっぽうで、原料である輸入牛肉の価格上昇も価格見直しに繋がったようだ。

「今までが安すぎた」松屋の値上げに寛容な声も

今回の値上げの原因となった輸入牛肉の価格上昇だが、今年に入りたびたび報じられているアメリカ産牛肉の価格急上昇、いわゆる「ミートショック」が大きく影響している模様。

新型コロナの感染拡大で、アメリカ国内における牛肉の生産と流通が不安定となっていたなか、一転して経済活動再開の動きとなったことで、その需要が急激に上昇。そのうえ、同様に経済活動を再開させた中国からの引き合いも増えたことで、価格が押し上げられているというのだ。

日本国内の飲食店の間でも、このミートショックへの対応に苦慮しているところは多いようだが、今回の松屋に関しては全国に店舗を展開する一大チェーンで、さらに牛めしといえばその看板商品ということで、日々好んで食べている方も多いだけに、今回の値上げの影響は多くの消費者の財布を直撃する格好となりそうである。

ただネット上の反応をみると、もちろん値上げに対する悲鳴の声も見られるものの、松屋に対しての怨嗟は意外にも少なく、「松屋は頑張った」「今までが安すぎた」といった声も多い印象。過去には牛丼チェーンの間で熾烈な価格競争が繰り広げられたいっぽうで、一部チェーンによる「ワンオペ」が問題になるなど、低すぎる価格の維持が過酷な労働環境に繋がっているといった見方も定着しているだけに、適正な価格に落ち着くことへの理解が進んでいるといったところだろうか。

「インフレの秋」到来も賃金があがる気配はなし?

このように消費者が、松屋による今回の値上げに対して一様に寛容なのに対し、同じ値上げでもシュリンクフレーション、いわゆる「ステルス値上げ」や「サイレント値上げ」への視線は、相変わらず手厳しい。

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過去には、コンビニチェーンによる弁当容器の「上げ底」「二重底」、さらに表から見える断面部分だけに具がみっちりと詰まった「ハリボテサンドイッチ」などが、激しい非難の声に晒されたが、このような「価格据え置きで内容量をしれっと減らす」という実質的値上げは、むしろ様々なメーカーで広がっているようで、SNS上ではそれを訴える投稿が日々あがっている状況である。

さらに、最近では小麦価格の高騰により、パスタや小麦粉の値上げがすでに9月に行われているほか、コーヒーも世界的な天候不順とコロナ禍による需要増大によって、値上げの動きがあるとのこと。さらには、このところ恒例になっているタバコの値上げも10月にあるとのことで、今年は食品類を中心としたさまざまな品目で「値上げの秋」「インフレの秋」となりそうなのだ。

先に挙げた松屋の値上がりに対して寛容な消費者の意見も、そもそもは商品の値上げに伴って賃金も上昇していくのが健全だというのが、大前提にある考えであるのは言うまでもない話。ところが日本は、バブル崩壊以降の約30年間に渡って、ほとんど賃金があがっていないという、世界の先進国のなかでも稀有な国である。それだけに昨今のインフレの流れも、賃金アップには繋がらず、国民の生活困窮をただただ招くだけのもの……そんな諦めの見方が相当に根強いようだ。

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