なぜ安倍政権は「消費増税凍結」カードを切れないのか?2つの誤算
選挙優先の安倍政権ですが、「タナボタ」ともいえるオバマ大統領の広島訪問で得点し、支持率上昇を期待していたのですが、沖縄で米軍関係者が日本の女性を殺害してしまったために、突然沈痛なムードになり、「オバマ広島カード」の威力は消えてしまいました。
それだけに、選挙カードとして「消費税」をうまく利用したかったのですが、これも狂いが生じています。
米国の「消費税延期」の声を外圧として利用しようとしたのですが、海外の「有識者」の間でも意見が分かれ、増税派も無視できなくなりました。
国会でも「リーマン危機か大震災がない限り増税実施」と「適宜適切に判断」を併記したために、判断基準があいまいになりました。そこで18日発表のGDPが注目されたのですが、政府はこれを使いこなせなかった節があります。
従来、GDPは政治的に利用されることが少なからずありました。例えば、かつて10年国債の金利が2%を超えそうな状況の下で、GDPが誰も予想しえなかったマイナス成長となり、金利が一気に低下したこともあります。
今回、消費税を再延期するために、GDPを意図的にマイナス成長で出してくる可能性も考えられました。在庫や政府支出はデータをいじっても外からはわかりません。
しかし、結局GDPは予想以上に強いプラス成長で出ました。これでは少なくとも「リーマン危機」並みの悪さとは言えません。今後海外からこうした危機が発生するかどうかも保証の限りではありません。そのなかで消費税の再延期を打ち出せば、選挙のための道具に使われたとの批判も予想されます。
「GDPプラス」は逆効果
政府は、GDPをマイナスにしては「景気後退」ととられ、アベノミクスの失敗と言われて選挙にマイナスと見たようです。しかし、プラスのGDPでは消費税延期のカードには使えません。
だからと言って、この0.4%成長は、選挙にプラスというほど、そして消費税引き上げに耐えられるほど強いわけでもありません。むしろ前述のように、実態はかなり弱いものです。