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ふるさと納税、返礼品に“美容整形”はアリ?ナシ? 「どこが地場産品?」との声が多数も自治体としてはかなり魅力的との見方も

ふるさと納税の返礼品のひとつに、まさかの“美容整形”の優待券を採用する自治体が出てきたという話に、大きな反響が広がっているようだ。

報道によると、採用しているのは神奈川県藤沢市と福岡市で、日本国内外に100院以上を展開する業界大手「湘南美容クリニック」のチケットが返礼品となっているとのこと。

藤沢市では、美肌治療(寄付金額4万円)、たるみ・小顔レーザー(15万円)、目元の若返り施術(73万円)などの各利用券を用意。また福岡市では同院の全治療に利用できるギフトチケットを、1万円の寄付で3000円分、10万円なら3万円分、100万円で30万円分を提供しているという。

昨年度からこれらのギフトチケットを登録した福岡市では、昨年末時点で申込数が120件あったといい、なかなかの人気ぶりのようだ。

美容整形は果たして地場産品なのか

昔は「他人には知られたくない」といった、とかくネガティブな印象が付きまとったものの、ここ最近では芸能人やインフルエンサーなどが、SNS上などで赤裸々に公表するなどの動きもあり、イメージがかなりが良化した感のある美容整形。

とある最近の調査によれば、若年層ほど美容整形に対し寛容な人が多いという結果も出ているようで、お金の力で身体的コンプレックスを解消することに対し、以前ような否定的な声ではなく、「それで前向きになれれば良いこと」といった、肯定的な見方が幅を利かすようになってきているようだ。

このように、世間で徐々に認められつつあるといった美容整形なのだが、ふるさと納税の返礼品に採用されるという動きに対しては、違和感を覚えるといった否定的な見方も多い模様。その違和感の理由として、最も大きいものではないかとみられるのが、ふるさと納税の基本中の基本である「返礼品は地場産品」という原則に、そもそも美容整形は果たして沿っているのか……といった見方だろう。

実際、先述した湘南美容クリニックの返礼品の件だと、神奈川県藤沢市で提供しているケースに関しては、同クリニックの第一院目となったのが2000年に開院した藤沢院だったということで、その後の繁栄の礎となった藤沢市に貢献できることはないか……ということで、返礼品提供に登録したとのこと。

それはそれで至極納得できる経緯というか地縁とも言えそうなのだが、ただそうなると、特に創業の地ということでもなさそうな、福岡市での返礼品提供に関してはどうなのか……といった話にもなるところ。

一応福岡市に提供しているギフトチケットは、同市内に所在する同クリニックの系列4院でのみで使えるものということで、福岡市側としては地場産品基準を満たし、また事業者登録要件の面でも問題ないとのジャッジだった模様。

ただ、そうとなれば同クリニックの医院が所在する他のどの自治体においても、返礼品の提供は問題なくできそうで、さらには同じような動きが他の美容整形クリニックに波及することも、今後は大いに考えられそうである。

返礼品の“在庫リスク”や“送料問題”から解放も…

ふるさと納税といえば、最近では宿泊券や食事券、現地で楽しめるアクティビティのチケットなどといった“体験型”の返礼品も注目を集めているようだが、とはいえ根強い人気なのが、ご当地名産の農産品・海産品などといった食品の類。

ただ、送料を含めた返礼品の費用総額は“寄付総額の5割以下”と定められているなか、大都市圏から離れた地方の自治体では、その手の返礼品の送料がかなり嵩むという問題も取沙汰されているところ。送料に圧迫される分、内容量を減らさざる得なくなっているところもあるようで、その結果返礼品としてのお得度が下がり、寄付が減る恐れを抱いているといった地域も存在するようだ。

その点、今回の美容整形の優待券の類なら、農産品や海産品などの返礼品に付きまとう在庫リスクなどの問題からは解放され、さらに送料に関しても、例え高額な寄付額であろうとも安価で済む。その点で、自治体にとってはかなり魅力的な返礼品といえそうで、飛びつきたい気持ちも分かるところである。

しかしながら美容整形に関しては、クリニックと利用者の間でのトラブルも依然として多いというのが実情。国民生活センターに寄せられた相談件数の推移をみても、2021年度の2,766件に対し、2022年度は2022年末時点ですでに2,464件と、前年度を超えるのはほぼ確実といったペースのようだ。

いわゆる“たけのこ剥ぎ”のように次々とオプションが加えられ、気付けば高額契約になっていたという、一部クリニック側の“悪徳ぶり”に起因するようなトラブルもさることながら、「自分の思い通りにならなかった」といった曖昧な話から揉めるケースも多々あるというなかで、ふるさと納税の返礼品をきっかけに美容整形を受けた者が、仮に何らかのトラブルに遭った場合に、その自治体も責任の一端を問われる形で巻き込まれてしまう……そんな事態が起こることも、考えられなくもないだろう。

先述の報道によれば大変好評だといい、自治体側にとってもかなりのメリットがありそうな“返礼品としての美容整形”なのだが、その反面でこういったリスクも想定できるということで、果たして今後ふるさと納税界隈のトレンドとなっていくのか、その動向が大いに注目されるところである。

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