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リチウム不足で「水素燃料車」に脚光。日本勢がEV周回遅れを逆手に取って世界を制す=斎藤満

EV(電気自動車)の潮流が変わりそうです。EVのバッテリーの原料となるリチウムが十分確保できなくなる危機感が強まっています。リチウム生産は数年後には需要に見合った供給ができない見通しになってきました。リチウムに代わる原料を開発するか、現在進められている水素燃料へのシフトが避けがたくなりそうです。(『 マンさんの経済あらかると マンさんの経済あらかると 』斎藤満)

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※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2023年7月4日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

現実化するリチウムの供給制約

オーストラリアの資源会社でリチウム化合物を生産するレイク・リソーシズ社は先月の会合で、バッテリー会社が原料のリチウムを確保できない危機に至る可能性が高いと述べました。

またリチウム生産最大手の米国アルベマール社は、2030年には高まるリチウム需要に対して、その供給が50万トン足りなくなる、との見通しを出しました。

韓国のバッテリー大手SKオンや日本の阪和興業などがこのレイク・リソーシズ社からリチウム製品の供給を受けていますが、昨年から需給のひっ迫で価格が高騰しているだけでなく、今後は需要の拡大に伴って、供給が追い付かず、利用各社が十分な量の確保ができなくなる可能性があります。

EV化で出遅れた日本は、それだけリチウムの確保、バッテリー生産が厳しくなります。

世界最大のリチウム生産国はオーストラリアで、次いで南米チリ、3番目に中国となっていて、この3か国で世界の9割を供給しています。

中国は国内の需要に自国のリチウムを充てているので、欧米のバッテリー会社はオーストラリアに多くを依存しています。そのオーストラリアがリチウムの確保ができない危機を訴えています。

新たな資源開発ができるか

そもそもガソリン車の場合、原料の石油の供給はほぼ無尽蔵で、長らく低コストの供給の恩恵を受けてきました。OPECが価格操作をしても、それでも量は確保され、原油価格もいまだ100ドル以下で調達できます。

それに比べると、リチウム電池の原料リチウムは、石油のような潤沢なものではありません。そこへ一気にEVシフトが起こり、すでに需給がひっ迫しています。

リチウムの供給地は、上記3か国のほか、ブラジル、アルゼンチン、ポルトガルなどがあり、米国でも量は確定できませんが、一部には900トン程度の生産があるとされています。

それでも量的には限界的なもので、今後の需要増を考えれば、新たな埋蔵地の探索発見、資源確保が必要になります。日本の小笠原近海も候補地に挙がります。

しかし、希少資源のリチウムが、化石燃料にとって代わる大量供給はもとより期待できません。EV用以外にもリチウム・バッテリーは用途が多くあり、EVで占有するわけにもいきません。

リチウムにかわる原料資源があればよいのですが、5年、10年という単位でも供給は困難です。

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