世界の時価総額ランキングを見ると、トップ層はテックや半導体などで埋まっている。それらよりも下位を見ても、名前を聞いたことがある会社が大半だろう。そんななか、トヨタより上位に位置する企業の1つが「ホームデポ」というホームセンターの企業だ。なぜホームセンターの企業の価値がトヨタより大きいのか。今回はこのホームデポについて分析したい。(天野博邦)
※本記事では、為替レートは1ドル150円とし金額はすべて円で記載します。
プロフィール:天野博邦(あまの ひろくに)
作家、投資家、経営コンサルタント。1982年山梨県生まれ。東北大学大学院卒(量子情報理論)。金融・コンサルティング業界を経て、2024年に独立。海外勤務の経験から主に欧米企業の企業分析が得意。日本をいかにより良い国にできるかをテーマとして執筆活動を行っている。
ホームセンターなのに時価総額トヨタ超え?「ホームデポ」とは何者か
ホームデポの時価総額はトヨタより10%ほど高い。同じ規模の会社としてはP&Gがある。
ホームデポはホームセンターの企業(住宅改修小売業者と自称している)としては世界最大であるとアピールしているが、展開しているのはアメリカ、カナダ、メキシコの3カ国のみである。3カ国にしか進出していないのに、世界中に展開している多業種の巨大企業と同規模というのは興味深い。とはいえ、この3カ国のいずれでも最大手である。
株価は下図のように概ね順調に伸びてきている。
さぞかし、マーケットシェアが高いのかと思いきや、実は17%しかない。市場規模は143兆円で、その17%の24兆円が売上だ。
店舗数は2,300ほど。したがって、1店舗あたりの売上平均は年間100億円。アメリカ国内での店舗は各地域の住宅件数に比例するように分布している(※州ごとの数値。筆者調べ)。日本の最大手は「カインズ」で、国内では比較的1店舗あたりの売上は高いが、それでも年間20億円ほどだ。
なぜホームデポは1店舗あたりの売上が大きいのか?
なぜホームデポは1店舗あたりの売上が大きいのか。いろいろな要因が考えられるが、1つは、プロ(住宅の改修やメンテナンスの業者)による売上が大きいことだ。
業者のほうが、DIY(自分でやる)よりも、消費の頻度と金額が大きくなることは当然だ。日本でも、プロ向けのホームセンターは増加傾向にある。ホームデポでは、どの店舗でも、DIY・プロの両方をカバーできている。
さらにホームデポの売上の内訳を見ると、意外にもインドアガーデン関連の売上が最多であることがわかる。アメリカのインドアガーデン市場規模は3兆円であり、2029年には4兆円に達するという。
一方、日本で住宅改修の市場規模が今後、大きく成長すると見込める理由は見当たらない。だが、企業単位でみれば、ホームデポのビジネスモデルから成長のヒントが得られると考える。
Next: 株価はまだ上がる?ホームデポの成長を牽引する2つの要素とは