秋の味覚の代表格とされるサンマだが、今年はシーズン当初こそ豊漁だと言われていたのが一転、漁獲量は去年と同じく低水準となる見通しだと報じられている。
水産庁によれば、9月中旬から10月にかけては日本近海に来るサンマの量が少なくなるとのデータもあるとのこと。都内の鮮魚店でも、最近の流通量はすでに去年並みに少ないといい、仕入れ価格が安定しないという。
水産庁所管の国立研究開発法人である水産研究・教育機構の研究員によれば、今後のサンマの漁獲量は9月・10月ともに、一時的に大きなサンマがとれる可能性はあるものの、不漁の状態が続く恐れがあるという。
8月までは前年比4倍の水揚げ量も…
ここ数年は不漁が毎年続いているサンマ。昨年は特にその傾向が顕著で、札幌の中央卸売市場で初水揚げされたサンマが1キロ23万円という高値で競り落とされ、同市内のスーパーで1匹5000円超という、信じられない価格で並んだこともあった。
ところが今年はというと、サンマ水揚げ量で日本一を誇る北海道・根室市の花咲港では今シーズン初の水揚げにおいて、去年の約469kgと比べて実に140倍となる約67トンという水揚げ量を記録。
またセリでも、過去最高値だった去年の1kgあたり14万400円に比べ、わずか200分の1という724円で競り落とされたと報じられたのだ。
実際、今年の漁解禁後の8月16日から31日までの間における全国のサンマ総水揚げ量は、2598トンを記録し、642トンだった昨年の約4倍にも増えたとのこと。
近年のサンマの不漁は、地球温暖化に伴う潮流の変化で日本近海にサンマが回遊しにくくなっていることが原因のひとつとされていた。しかし今年は、潮流が沖合に近づくタイミングもあったこと、また今年はサンマ漁の解禁が早かったことも、シーズン当初のサンマ水揚げ量の増加に繋がったようである。
ただ、そんな潮流の近づきという“ボーナスステージ”は一時的なものだったようで、その後のサンマの来遊量は昨年並みの低水準となり、やはり今年のサンマも不漁……ということになってしまったようなのだ。
不漁の影響でサイズの小型化も顕著に
こういった近年続いている不漁も大いに影響してか、サンマの消費量も落ち込んでいるということで、総務省の家計調査によれば、2023年の全国ひと世帯あたりのサンマ購入量は235gと、豊漁だった09年のほぼ1割にまで減ったということ。
いわゆる深刻な“サンマ離れ”といったところなのだが、そういった状況の原因として価格の高騰とともに取沙汰されているのがサイズの小型化だ。
実際、秋になると「生さんまの炭火焼き」が期間限定でメニューに加わる外食チェーンの大戸屋でも、今年9月27日から販売を開始する同メニューにおいては、すべて2尾セットで用意するとのアナウンスが。サンマ1尾ごとにはサイズに個体差が当然あるなかで、1尾で提供するには小さすぎるサイズも含まれる可能性が大いにあるがゆえの措置……とも考えられそうなところなのだ。
そんなサンマの小型化なのだが、小ぶりになることで脂乗りがどうしても悪くなってしまうというデメリットも。痩せているうえに価格も高いとなれば、消費者側としてもあまり買いたくなくなるというのは、当然の流れといえそうである。
思えば今年は折からの“米騒動”の余波で、新米が出回る時期に入ったもののその価格はお高めで、さらにサンマもこのように例年通りの不漁に。炊きたての新米と新サンマといえば、庶民でも手軽に味わえる秋の味覚の最強コンビだったのだが、今年はいずれも苦境というなんとも寂しい状況となってしまっているようだ。
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