3月14~15日に開催されたFOMCで、3ヶ月ぶりとなる利上げが決定されましたが、市場の反応はまちまちでした。米国株は織り込み済みとばかりに、今のところ冷静な動きをしていますが、ドルは急落し、米国金利も利上げ決定後に低下しています。
こうした中で、これまで円相場との連動性が高かった日本株は、今回の円急伸には反応せず、まるで突如として冷静な米国株の動きに擦り寄ったかのように落ち着いた動きをしていますが、このようなまちまちの動きは果たして持続性があるものなのでしょうか?それとも、どれかのアセットの動きが全体と不整合であることから早晩調整が必至なのでしょうか?
本日は、一見すると比較的落ち着いているFOMC後のマーケットの「ダマシ的な不整合」と、今後の見方について解説してみることにします。(『元ヘッジファンドE氏の投資情報』)
プロフィール:E氏
国内大手生保、ゴールドマン・サックス、当時日本最大のヘッジファンドだったジャパン・アドバイザリーでのファンドマネージャー経験を経て、2006年に自らのヘッジファンドであるINDRA Investmentsを設立し国内外の年金基金や富裕層への投資助言を開始。2006年10月からのファンド開始後はリーマンショックや東日本大震災で、期間中TOPIXは5割程度下落した中で、6年連続のプラス(累積30%)のリターンを達成。運用歴25年超。
米ドル急落をよそに底堅い米国株と日本株。嘘つきは誰だ?
大きな転換点となった3月FOMC
まず、今回のFOMCでの25bpsの利上げは確実と見られていたので、想定通りの結果でした。と言っても、このコンセンサスが形成されたのは実は最近のことであって、それは多くのFOMCメンバーのタカ派的発言によって形成されたものです。
前回の利上げ決定がなされた昨年12月FOMCで、メンバーはドットプロットと呼ばれる(全メンバーの見通しを集めた)先行きの金利見通しを作成していましたが、その見通しでは今年の利上げ回数は2回程度でした。
なので、12月FOMC以降から2月に入るまで、マーケットの今年の利上げ回数のコンセンサスは2回程度で、それゆえに次回利上げ時期は今年6月(6月と12月)と見られていました。
この次回利上げ時期のコンセンサスが前倒しになり始めたのは、2月上旬になってからです。
発表された1月のインフレ関係のデータが強かった上に、トランプ大統領が「今後数週間以内に目を見張る減税を発表する」といった過剰に株価を煽るようなポジティブ発言を繰り返したことで、米国株が過熱気味になったことで、それまでタカ派だったメンバーだけでなく、従来はハト派と目されていたメンバーも3月FOMCでの利上げを支持し始めたのです。
と言っても、実は3月に入るまでは、3月FOMCでの利上げ確度は3割程度で、5月や6月での利上げが相変わらず主流の見方でした。
この見方が急速に変化したのは、3月3日の講演でイエレンFRB議長が、2月14日の議会証言に引き続いて3月FOMCでの利上げを支持すると発言したためです。
前任のバーナンキ氏と比べイエレンFRB議長は情報発信量がとても多く、市場との対話を積極的に心がけていますが、ほとんどの発言は具体性に欠ける曖昧なもので、従来は利上げ直前でも利上げ時期を明確に示唆することはほとんどありませんでした。
それが、今回は議会証言に加え、3月FOMCの直前の情報発信でも同会合での利上げを支持したので、市場は3月FOMCでの利上げをほぼ確実視し、利上げ確度は一気に100%近くまで上昇したのです。
ポイントは年間の利上げ回数だった
これだけなら、今回の決定はどのアセットにとってもノーサプライズになるのですが、あまりに急に多くのFOMC参加者がタカ派になったことで、マーケットの一部で今年の年間利上げ回数の見通しも引き上げられるのではないかという見方が急浮上してきたのです。
つまり、利上げ時期を前倒しにしただけでなく、今後乗り上げペースも従来考えられていた以上のスピードで利上げを行うというものです。この結果、市場コンセンサスの今年の年間利上げ回数は、3月に入ると年間3回を超え、4回の利上げを主張する見方も出てきたのです。
この見方に乗ってドルを買い進んだのがヘッジファンドなどの短期筋投資家です。CMEなどの取引データによると、短期筋のドルポジションは年初から一貫してロングを解消する動きになって、その一方で円やユーロなどの他通貨のショートポジションを買い戻していました。