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円安・株高に沸いた「トランプ相場」の第1幕が終わりに近づいている=近藤駿介

ドル高を牽制したい新政権と、利上げを継続したいFRB

安倍総理との会談で実質外交デビューを果たし、「トランプ氏は信頼できる指導者だと確信した」という言葉を引き出すことに成功したトランプ次期大統領。閣僚人事が固まる過程で、新政権側からドル高を牽制するような発言が飛び出しても不思議ではない。

一方、大統領選挙への影響に対する配慮もあり利上げ先送りしてきたと思わるイエレンFRB議長にとって、次期大統領がトランプ氏に決まった直後に利上げに踏み切るというのは、イエレン議長の更迭まで口にしていたトランプ氏に対するちょっとした意趣返し。

17日に行われた議会証言で、イエレンFRB議長は「引き締めが遅れれば、経済が過熱して急激に利上げしなくてはならなくなる」と、改めて「Behind the curve(政策が後手に回る)」のリスクに言及し、早期の利上げに意欲をみせた。

その背景にあるのは、法定準備預金の13倍にも及ぶ約2兆ドルもの資金が超過準備預金としてFRBに積まれていること。経済活動に使われていない資金が大量にFRBに積まれているのは、有望な投資先が少ないことの裏返しでもある。

こうした状況の中で1兆ドル規模のインフラ投資計画を主張するトランプ次期大統領が誕生することになった。これは世の中に投資機会が増えることを意味し、多額の超過準備預金の一部が市中に流出する可能性を高めるものである。

現在の経済活動に使われていない超過準備預金が市中に流れ出すということは、インフレ圧力が急速に高まることを意味するものである。これを食い止めるためにもFRBにとって利上げは必要になってきたといえる。

今後、FRBの利上げによってドル高圧力が高まれば、トランプ新政権側からそれを打ち消すような発言が出てくることは十分に考えられる。

イエレンFRB議長が議会証言で近い将来の利上げを明言したことで、18日時点で市場は12月13、14日に開催されるFOMCでの利上げを95%織り込んだ(CME Fed Watch ベース)。市場が12月の利上げを95%織り込んでいるということは、12月利上げを材料に市場が動く余地は殆どなくなってきたということでもある。

また、18日時点で市場が織り込む次回の利上げ確率が50%を超えているのは2017年6月のFOMCである。イエレンFRB議長は穏やかな利上げを意識させることを目指していると思われるが、次回の利上げまで半年以上の期間市場が利上げを織り込んでいないということは、12月のFOMCで利上げが実施された後は一旦材料出尽くしになる可能性が高いということでもある。

ドル高を牽制したい新政権と、利上げを継続したいFRB、12月の利上げを95%織り込んでしまった市場。これらの組み合わせが指し示していることは、ドル高とそれを追い風とした日本株上昇という「トランプ相場」の第1章は終わりに近付いているということだ。

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近藤駿介~金融市場を通して見える世界』(2016年11月19日号)より
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