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狂気か?打算か?「トランプ外交」が世界に突きつける2つのシナリオ=高島康司

エングドールは「ランドパワー vs. シーパワー」で世界を捉えている

ところでエングドールの覇権再構築論の根拠になっているのが、歴代の政権でアメリカの外交政策に強い影響を与えているズビグニュー・ブレジンスキーの地政学のモデルである。

これは、戦後70年、アメリカの世界戦略の主軸となっている「ハートランド理論」のことだ。以前の記事でも紹介したが、重要なので再度掲載する。

これは19世紀後半から20世紀初めにオックスフォード大学地理学部の創設者のハーフォード・マッキンダーが主張した「ランドパワー・シーパワー理論」を、アメリカのエール大学教授であったニコラス・スパイクマンが継承し発展させた理論だ。ちなみにマッキンダーの考え方は、第一次世界大戦前の大英帝国にも採用され、帝国維持の基本理念となった。

「ハートランド理論」とは次のようなものである。

イスラム帝国、中国の元、オスマントルコ、帝政ロシアなどを見れば分かるように、これまで歴史上、ロシア、中国、中央アジア、東欧、西欧などの諸地域を含む広大なユーラシア大陸を制した世界帝国が出現してきた。これが「ランドパワー」である。

これに対し、大英帝国大日本帝国、そして現在のアメリカは、海を中心に勢力を拡大する「シーパワー」である。

大英帝国やアメリカなどの「シーパワー」が勢力を維持するためには、「ランドパワー」である陸の帝国の勢力拡大を押さえ込まなければならない。一方帝国化した「ランドパワー」を見ると、中央アジアから東欧にかけたユーラシアを支配した勢力が、世界帝国化している。この地域は「ランドパワー」の要であるということでは、まさに「ハートランド」である。

ということは、「シーパワー」が同盟し、「ハートランド」のユーラシアで、これを支配する単一の勢力が出現しないように押さえ込むのが、世界帝国化した「ランドパワー」の出現を阻む最良の政策である。

歴代米政権の外交政策の基本理念は、まさにこの「ハートランド理論」であった。冷戦期には「ランドパワー」であるソビエトを押さえ込むために、同じ「ランドパワー」の中国を間接的に支援して中国とソビエトを仲たがいさせ、また、日本、韓国、東南アジア、インドなどの「シーパワー」の国々と同盟し、ソビエトの拡大を阻止した。

オバマ政権の外交も「ハートランド理論」に基づく

現代のアメリカでこの「ハートランド理論」を代表する人物こそ、歴代の米政権で外交政策を立案しているズビグニュー・ブレジンスキーである。1997年、ブレジンスキーは『グレートチェスボード(邦題:世界はこう動く)』という本を著わし、冷戦後の世界におけるアメリカの外交目標と世界戦略を示した。

それは、「ハートランド」の中央アジアを支配する強大な国家が出現しないように、NATOを拡大させるなどしてロシアを徹底して押さえ込むことを主張した本である。

このような視点から見ると、オバマ政権のロシア敵対政策は、やはり「ハートランド理論」の適用であるのが分かる。

ロシアのような国が「ハートランド」の一大勢力にならないように抑止するためには、平和的な外交ではなく、厳しい経済制裁や、軍事力の大胆な使用も辞さない強硬な態度こそカギとなるという考え方だ。

先に紹介したエングドールのトランプ政権の外交政策の予測も、このような「ハートランド理論」に基づいている。

Next: どちらの予想シナリオが現実となるのか?

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