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狂気か?打算か?「トランプ外交」が世界に突きつける2つのシナリオ=高島康司

反ネオコン・反グローバリズム・反軍産複合体

もちろん、ゴールドマン・サックスの元幹部のスティーブン・ムニューチンが財務長官に起用されているので、ウォールストリートの影響もあることは間違いない。トランプは、オバマ政権が2010年に制定した金融機関規制の「ドット・フランク法」を撤廃することを約束しているが、これはまさにウォールストリートの意向の反映だろう。

しかし、こと外交政策に限っていえば、トランプ政権は明らかである。これは反ネオコン反グローバリズム、そしておそらくは反軍産複合体の政権なのだ。

異なった2つの予測

では、このようなトランプ政権の外交政策はなにを目標にするのだろうか?覇権が凋落しつつあるといっても、アメリカの外交政策が国際秩序に与える影響は大きい。気になるところである。

ところが、興味深いことにトランプ政権の外交政策の狙いに関して、もっとも信頼できる専門家や調査ジャーナリストから2つの相反する見方が出ている。それらは以下のものである。

シナリオ1

「米国は多極型の国際秩序を容認し、覇権を放棄する」

ひとつは、前々回メルマガ(第408回)記事で詳しく紹介したフランスの著名なシンクタンク・LEAP/2020に代表される見解と予想だ。

トランプ政権はこれまで鋭く対立していたロシアと和解することで、アメリカとロシアが同盟関係になる可能性が極めて高い。一方ヨーロッパでは、これから極右のポピュリズム政権が数多く台頭するので、現在のEUは解体し、主権国家の自立性を前提にした新たな国家連合へと置き換わる可能性がある。この国家連合は反グローバリゼーションを掲げるトランプ政権と強い親和性がある。その結果、ロシア、アメリカ、ヨーロッパのゆるい連合が形成されるだろう。

また当初トランプ政権は、関税の強化など中国には厳しい姿勢で望むだろうが、これは長くは続かない。すでに中国は世界経済のけん引力だし、ロシアの盟友でもあるので、ロシアとうまくやろうとすれば、トランプ政権といえども中国の勢力拡大を容認するしか道はない。その結果、中国、アメリカ、ロシアでそれぞれ勢力範囲を決定し、地域覇権を分け合う本格的な多極型の体制に移行するだろう。

そしてイランだが、トランプ政権は厳しい姿勢を維持できなくなるはずだ。イランはロシアと中国の盟友である。トランプ政権がロシアとの関係を重視するなら、イランとも良好な関係を保つ必要に迫られる――

このような見方だ。これは、これはLEAP/2020のみならず、元米情報機関のアナリストで鋭い分析と予測を提供しているセイカーや、調査ジャーナリストで地政学の専門家であるココ・エスコバルなどの人々が共有する見方だ。専門性の高い独立系のネットメディアでは、これは主流の見方である。

Next: どちらが現実に? 地政学の権威が指摘する真逆の第2シナリオ

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