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安倍総理の三つの誤算=青木泰樹 京都大学レジリエンス実践ユニット・特任教授

第三はビッグ・サプライズでした。
前回取り上げましたが「TPPの消滅」です。
旧民主党政権下でTPP交渉への参加問題が
取りざたされた当時、「聖域なき関税撤廃を
前提とする限りTPP交渉には参加しない」
ことを公約に政権の座に返り咲いた自民党でしたが、
政権復帰後は手のひらを返したように交渉参加に
前向きに転じ、なし崩し的に参加表明となりました。

その後は、譲歩に次ぐ譲歩を重ね、
「何としてでもTPP発効!」を安倍政権が
目標としてきたことは周知のとおりです。

TPPに関する議論の根底にあるのは、
「グローバリズム対ナショナリズム」の対立です。

ナショナリズムは経世済民の思想に連なるものです。
TPP論争は、いわばその代理戦争でありました。

しかし日本国内では反TPP運動、すなわち
「国家主権および民主主義を保持することは
グローバリズムより大切だ」という価値観に基づく
政治的ムーブメントは盛り上がりませんでした。

政権政党、財界、経済マスコミ、御用学者および
エコノミストといった圧倒的多数のエリート勢力が
TPP推進を叫び、「反TPPは時代遅れの保護主義だ」
との悪意あるレッテル張りが奏功したせいかもしれません。

結果的に日本のTPP批准は既定路線となり、
ナショナリズム派は、為す術もなく、
TPP発効後の将来の日本社会の被害をいかに
最小化するかを考えるしかありませんでした。

そこへ、トランプです。
神風がTPPを吹き飛ばしてくれました。
運不運は、人間だけでなく国家レベルでもあるものですね。

さて、私なりの本年の三大イベントを挙げてみましたが、
いずれを見ても国民経済にとって、日本国民の大多数に
とって好ましい結果をもたらすものでありました。

昨年来からの懸念事項が三つも解消したわけですから、
「今年、日本はツイテいた」とひとまず総括したいと思います。

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