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安倍総理の三つの誤算=青木泰樹 京都大学レジリエンス実践ユニット・特任教授

初期アベノミクスは三本の矢で知られているように、
デフレ脱却のための大胆な金融緩和、
機動的な財政出動および成長戦略でした。

その成功のポイントは、財政再建論をひとまず
棚上げし積極的な財政出動に転じたこと、
金融緩和でその環境を整えたこと、および
新自由主義的な成長戦略は考えるだけで
具体的に実施しなかったことでした。

安倍総理が財政均衡主義から逃れ、積極財政を
選択したことが正しかったことは、その年の
成長率(実質1.4%)に如実に表れています。

ところが一年も経ずして安倍総理は、
「経済成長と財政再建の二兎を追う」ことを掲げ、
積極財政の旗を降ろし、2014年4月の消費税増税に踏み切りました。

政界、財界、官界、学界、マスコミ界の
有識者と言われる人たちの大半が「増税すべし」
と唱えたことに影響されたのかもしれません。

その時点で初期アベノミクスは終わり、
財政再建、金融緩和、成長戦略から成る
「アベノミクス第二章」へ転じたのです。

再びの財政均衡路線の選択です。

今年6月、その選択の誤りを実質的に表明することに
なったのが、消費税再増税の延期であったと思われます。

安倍総理の第一の躓き、誤算です。

ようやく増税と緊縮財政が経済成長と
両立しないことを認識したのではないでしょうか。

ところが安倍総理は、デフレ脱却を図るために
積極財政路線に復帰することはせず、リフレ派理論に頼りました。

下野していた時代に、安倍総理がリフレ派の
賛同者になったことはよく知られていますから、
自然な流れかもしれません。

リフレ派の論者たちの「量的緩和によって
インフレ期待を高めれば、実質金利を低下させられる。
それによってデフレギャップを解消できる。
その後は成長戦略の出番だ」との主張を
受け入れたのです(詳細は下記の第9章参照)。
https://www.amazon.co.jp/dp/4757224257

ここからアベノミクスは、金融緩和と成長戦略を
中心とする第三段階に至ったと言えます。

Next: リフレ派理論の通りには動かない現実経済。これからのアベノミクスはどうなる

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