公的年金がダメなら外為特会など活用も
まず「手土産」については一部に報道され、日本の公的年金マネーを米国のインフラボンド購入に充てる話が出ましたが、GPIFのトップに否定され、国会でも問われて後退しました。
しかし、もともと米国からは日銀に米国債購入をさせるアイディアがあり、その伏線として、米国がインフラ投資を進めるうえで、その資金調達に日本が協力しよう、という形で話が進んでいます。
公的年金がだめなら、外為特会などの活用も検討されています。その資金を使ってもらい、米国の生産雇用拡大に貢献し、併せて円安につなげようというものです。
日本が米国に資金支援(ドル債購入)することで円安になっても、これにはトランプ大統領も反対はできないだろう、というものです。
この案を提示し、米国から日本の円安誘導批判が出なければ、為替市場は一旦安心してドル買い円売りを再開、日本株も改めて上昇に向かう可能性もあります。
ドル債購入でも安心できない日米関係のウィークポイント
しかし、日本が資金面で米国のインフラ投資を支援しても、農業、自動車では個別業界の利益が絡んでいるので、米国が総論とは別に「公正公平」を求めてくるリスクは依然として排除できません。
TPPではぎりぎりコメなどで特別に関税を確保しましたが、日米2国間協定となると、この確保が難しくなります。肉類でも同様です。
さらに厳しいのが自動車です。昨年の対米黒字6兆8千億円のうち5兆円余りが自動車によりますが、米国は日本車に2.5%の関税をかけているのに対し、日本は米国車に関税をかけていません。
それでも米国車が日本で広がらないのは、流通の問題もありますが、基本は車の性能、信頼度によるところが大きいと思います。
私もかつてニューヨーク郊外で4年暮らしましたが、冬に米国車で事故や故障に合うと、命が脅かされるので、どうしても信頼性の高い日本車を選んだことを覚えています。
制度的に完全に「公平」にしても、日米の自動車不均衡は是正が困難で、最終的にバランスが求められるとなると、かつてのように日本側が輸出の自主規制に出るしかありません。
日本の自動車・農業に厳しい逆風
その点、自動車だけで5兆円余り日本が輸出超過であることは、これをどこまで抑えるかによって、日本の自動車やその下請け企業には甚大な縮小圧力になります。
若者の自動車離れで国内市場が縮小するうえに、対米輸出の自主規制に出れば、逃げ道がなくなります。自動車業界は下請けのすそ野が広いだけに、広範な影響が出ます。
自動車を中心に輸出抑制、減産が広がると、日本の生産自体が大きく落ち込み、GDPも1%近く縮小する懸念があります。株価も押し下げます。
米国のインフラボンドを日本が購入しても、トランプ氏を取り囲む国際金融資本の利益になるだけで、自動車、農業への防波堤にならない可能性があります。